another ocean #3

2012.10.13 17:00|☆another ocean 【完】
another ocean

KangIn side

ソンミンの丁寧な運転に痺れを切らしたカンインは、ソンミンを後部座席に追いやってハンドルを取る。

「ちょっと、兄さん・・・頼むから事故らないでよね。」
「事故ったことなんか無いだろ?」
「あってからじゃ遅いんだよ。車に傷でも付いたら・・・ドンヒに殺される。」

助手席にのったミナはカンインの顔を見ながらニコニコ笑っている。
ご両親が無くなって年の離れた妹を育てて来た。
ハンディキャップもあるし、女の子が・・・並みの苦労では無かったと思うが、ミナは笑顔を絶やさない。
フワフワという形容詞がピッタリな笑顔は、切れ長の二重の目の美人な顔立ちの彼女の印象を優しく崩す。
声が聞きたいと思うこともあった、切なく愛おしくミナを呼ぶ俺の声を聞いて欲しいと思うこともあった。でも、ミナの瞳はだれよりも雄弁に語る。
柔らかく優しく包み込んで“愛している”と。
その瞳の輝きだけで、カンインは胸がいっぱいになるのだった。
だから精一杯気持ちを込めて見つめ返す。

も愛しているよ。伝わるかな?お前が大事だよ?・・・伝わっているよな?

いつも傍にいてやれるわけでもなくて、寂しい思いもしているだろうが、そんな素振りを微塵も見せずにいつも暖かく迎え入れてくれる。帰ってくる場所はここなんだと、ミナの横が定位置なんだと実感する。

「僕が前の方が良かったんじゃない?アンリちゃんと前後に座っちゃったら、ミナさん何話しているか分らなくなっちゃうんじゃない?」
「お姉ちゃん唇の動きで会話分りますよ。」

アンリの言葉に、「そうなの?すごい。」と眼を丸くして返事をする弟。
5年も経つのに・・・相変わらず可愛い弟。
この二人、男女なのに・・・印象が一緒って如何いうことだよ。
バックミラーに映る二人の姿に噴出しそうになっていると、アンリと目が合った。

「オッパ?どうかしましたか?」
「・・・いや、家族がそろったなぁって。な?」ミナを見ると大きく頷いている。
「アンリちゃんはさぁ・・・。」
「アンリです。オッパ。」オッパって呼ばれて盛大に照れているソンミン・・・。
「あー・・・アンリはさぁ、ヒョンが・・・大事なお姉さんの夫になっても良い訳?」
「むしろ大歓迎です。オンニは・・・あんまり両親の記憶のない私には、姉というよりはオンマみたいな存在なので、オッパというか・・・アッパが出来て嬉しいです。」

そういったアンリにバックミラー越しに両手を広げてハグをする素振りを見せると、後ろから後頭部を叩かれる。

「危ない!前を向いて、運転に、集中。乗っているの僕だけじゃないんだからね。
・・・義姉さんもアンリも居るんだから。」
「ソンミナ・・・それは・・・。」
「鈍感。ほら、大事な家族乗せてんだから。」

そういって後ろからシートを蹴る。

「・・・あー・・・お前・・・覚えてろ。」

そう言うと一瞬固まったが、すぐに冗談と気付いたのかアンリと後ろで話し出す。
アンリはそこにいるだけでパァッと明るくなるような華のある子。
この小さな太陽は恐ろしいほどポジティブで、環境の不遇を嘆かず、姉を笑顔にすることが私の特技だと言い張る。
姉そっくりの白いきめ細かい肌、目、眉、鼻なのに印象がこうも違うのはコロコロと変わる瞳のせいかもしれない。
喜怒哀楽が激しいところもあるが、朗らかな子で綺麗というより、可愛い印象だ。

ミナの家に着いて車を降りる。
俺の手を、ミナが突っつく。俺の方を向いて、手話で話しかけてきた。

『ソンミン君も上がるわよね?一緒にご飯にしましょう?』
「うん、そうだな・・・有難う。ソンミナ、ミナが一緒に食事しないかって。」
「ほんと?あ・・・んー・・・一度帰りたいな。ドンヒに車借りっぱなしで悪いし。」
「じゃぁ、夜来いよ。週末だし、泊まっても構わないんだろう?」
「・・・いいの?邪魔じゃない?」

ソンミンの口の動きが分りづらかったらしく、俺の手をそっと触って『なんて?』と尋ねるミナ。

『邪魔じゃないかって。』
『全然!家族なんだから!!』
ミナが間髪入れずに否定するから、少し悲しくなって甘えてみる。
『・・・そう全力で否定するなよ。俺は二人になりたいのに。』
「ふーん・・・オッパ、私も邪魔なわけ?」

振り返ると腕組みをして、頬を膨らましむくれているアンリが居て、その様子をソンミンが驚いた顔で見ている。

「あ、アンリ居たのか。」
「当たり前!ソンミンオッパ、来てくれないと困る。私弾かれる。」

ソンミンの腕をとり甘えるアンリの言葉に、ソンミンは照れたように笑い鼻を擦る。

「じゃぁ、戻って来たお祝いと、結婚の前祝と・・・家族になる御祝だね。ワインとデザートを買っていくよ。レポートをやっつけてからだから・・・7時には行けると思うけど、いい?」

あぁと頷いてソンミンを見送る。
去って行く車に『あとでねー」と声をかけ、にこやかに手を振る二人の姿と、運転席の窓から片手を挙げて応じるソンミンを見て、いい家族になりそうだとカンインは胸を撫で下ろした。
これで自分がいないときも・・・何かあっても、ソンミンが二人を守ってくれるだろうと。
除隊後、腕を買われてついた仕事は機密情報を取り扱うため、業務内容は勿論、勤務地・赴任期間も家族にすら伏せられる。
やりがいはあるが、何も言ってやれないことに申し訳なさを感じていた。
結婚したって、それは同じだろう。
うすうす感じてはいるだろうが、ミナもアンリも聞いてこない。
今回戻って来れたけど、いつまた何処へ行けと命令されるか分からなかった。
すこし神経質で繊細な、可愛い仕草が多い弟だけれど、いつだって真っ直ぐな気持ちで物事に取り組む姿勢は男らしい。
興味を持って取り組んだら遣り通す弟に、カンインは兄ながら頭が下がる思いを抱いているのだった。
ソンミンなら、自分の不在時に支えてくれる。守ってくれる。
それにミナならソンミンの繊細な部分を理解してくれるだろうし、アンリが解きほぐしてくれるだろう。

「オッパ?」
ふと気付くと、マンションの入り口でこちらを不思議そうに振り返る二人が居た。
慌ててその後を追いかけ、愛しい人と可愛い子の肩を両方に抱いて家へと上がった。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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