another ocean #4

2012.10.14 00:26|☆another ocean 【完】
another ocean


DongHae side

音を立てずに玄関のドアを開けると、その内側へと体を滑り込ませる。
家の中はシンとしていて、物音一つしなかった。ドンヘは思わず、安堵のため息を小さく一つついた。
後ろ手に鍵を閉め、体にまとわりつく日の匂いを流そうと靴を脱ぎかけた時、ふと視線を感じて吹き抜けを見上げる。
吹き抜けに面した廊下に、白磁のように透きとおった肌の弟リョウクが立っていた。

茶色い髪は緩く巻いていて、クリッとした愛らしい目と小さな蕾のような唇に天使のようだとドンヘは目を細める。
そもそも、天使どころか・・・それに係わる一連のものは自らの存在とは対極のところにあり、縁遠いものだが。
でも、きっと・・・それはリョウクみたいなんだろうとドンヘは想像する。
包み込むような優しさと、己の意思を曲げない強さが、消えてしまいそうに儚く折れそうな細い体には入りきれないぐらいの、存在感を与えていた。
何か言おうとしているリョウクに、唇に指を一本押し当てて黙るようにジェスチャーをして、その指で浴室を指し示してからリョウクの部屋を指差すと、言いたい事が分ったのか小さくコクッと頷いた。

浴室に飛び込み手早く服を脱ぐと、バラのエッセンスで作ったシャワージェルを頭から被り、体に塗りたくる。
太陽の光の中出ていっても平気な自分と、両親から同じ遺伝子を受け継ぎながら、その匂いだけで気分が悪くなるリョウクと・・・この差は一体何なのだろうと思う。禁忌である混血は・・・こうした能力的に不安定になるからなのだろうか。ドンへ自身、何が出来て何が駄目なのか・・・自分自身のことでさえさっぱり理解できていなかった。
全て流して、仕上げにワインのような色の濃縮液をグラスに注ぎ、水で薄めると一口目は嗽をし、残りを飲み干した。

兄達を起こし面倒なことにならないように足音を消して二階に上がると、ドンヘは自室の向かいの部屋で足を止め、ノックもせずにドアを開けた。リョウクはベッドでうつ伏せになって本を読んでいたようだった。

「ピアノ、弾かないのか?」

ベッドとは対角の位置にあるグランドピアノが、リョウクが座るのを待っているかのように鎮座していた。
窓にはミッドナイトブルーのビロードのカーテンが、光を遮るかのようにきっちりと引かれている。

「・・・まだ早いでしょ。ヒチョルヒョン起こしちゃうと怖いもん。」

本を閉じて体を起こすとベッドの上で胡坐をかいて座ったリョウクの横に、ドンヘも腰掛ける。
リョウクをもってしても、ヒチョルは怖いらしい。ドンヘの目にはずいぶんと優しくされているように見えるのだが。

「ジョンウニヒョンはいいのか?」
「ヒョンが僕に怒ったことないし、怒らないし、怒られるようなこともしないし。」

ヒョンと違ってと付け足す。可愛い顔をして・・・こいつが最強かもしれないという思いがドンヘの頭の中を過ぎる。

「ね、今日は何処行って来たの?」

そんなドンヘをお構いなしに、キラキラした目で見つめ返すリョウクをやっぱり可愛いなと思いながら、今日一日あったことを、あること無いこと・・・いや、あることだけだが、話して聞かせた。
プールに言ったというと、目を丸くして驚き・・・キュヒョナと同じように「尻尾は?鱗は大丈夫だった?」とふざけて言い・・・水に濡れたってそんなものが出ないことは、血を分けた兄弟だから出ないことは重々承知のはずなのに・・・全てを聞き終わった後、笑っていたのに、なぜか悲しそうな瞳になり、小さくため息をつかれた。

「・・・ねぇ、ヒョン。僕分んない。・・・どうして?大切な人を傷つけちゃうかも知れないことを・・・。」

リョウクがそこまで言うと、その言葉を遮るように。
・・・ドンへは横に何もかも投げ出すかのように寝転び、そんなドンへを見て、リョウクは口をつぐんだ。
ドンヘの頭を、リョウクの細い指がそっと撫でる。その髪を指に絡ませるように、あやすようにしながら。
ドンヘはうつ伏せへと寝返りを打って、リョウクの腰に腕を回し、されるがままになっていた。
リョウクの言葉は今回のことだけでなく・・・ドンヘがヒョクチェに贈ったクロスのことも言い含んでいるようだった。

今年の誕生日にはプラチナのペンダント・・・トップがクロスになっているのを贈った。
ひと目見るなり、『正気か?』と聞き、『マジ笑えねぇ』と呟いたが、
ドンヘが『シルバーじゃくてプラチナ。おそろいだ』といって着けているペンダントを見せると、
『センスねぇ』と言いながら笑ってすぐに身につけてくれたのだった。
ドンヘ自身、自分の行動が論理的でないことに・・・破綻しつつあることに、気付いているが、
どうしようもなかった。
すごく大切で、いつも笑っていて欲しいのに、一緒に笑っていたいのに・・・大事に閉まっておきたいのに・・・どうしようもなく困った顔が見たくなる。

・・・すべて、破壊したくなる。

ドンヘはリョウクに撫でられながら、視界が歪んでいくのを感じ、目を閉じギュッと瞼に力をこめる。
何時からか定かではないが、・・・たぶん、あの頃から・・・ヒョクチェは・・・笑わなくなった。
いや、笑うのだが・・・ドンヘが好きな、見ていて幸せになれる笑顔が減ってしまったと思う。
大人になったとか、そんなんじゃない。
それにヒョクチェはドンヘのどんな要求にも・・・以前にも増してNoと言わなくなった。
“仕方ないな”的な態度は前からだが、それでもどこかからかっているかの様な楽しげな雰囲気がそこにはあった。
それが今は・・・半ば義務のように自分の要求を飲み込むのを見るにつけ、歯がゆさを覚え、いっそ呆れるなり、怒って怒鳴ってくれればいいと思うが、そんな雰囲気を微塵も出さないヒョクチェへの要求は、苛立ちと共にエスカレートしていくばかりだった。

「・・・リョウク。」
「うん?」

『・・・苦しい。』
そう素直に呟いたら、涙がこぼれそうで・・・思わず唇を噛み、拳を強くにぎりしめ堪える。
大事なものにそおっと包むように触れる、柔らかく自分の髪を撫でるリョウクのように振舞えたら、どれほどいいだろう。
トントンと指で拳を突かれ、リョウクを見上げる。
眉間に皺を寄せて、苦しげな表情に慌てて飛び起きた。

「どうした?苦しいのか?」
「違う・・・手、開いて。」

リョウクはそう言ってドンヘの右手を取り、その拳を両手で包むと指を一本ずつ広げた。
手のひらには自身の爪が食い込んでいたようで、血が滲んでいた。

「・・・痛いのは駄目だよ。」

そういってリョウクは右手の小指を口に運び、指先を噛み切ると流れる血をドンヘの手のひらに落とした。
熱した石の上に水を落としたかのように、白い煙が上がり、煙が消えたかと思うとドンヘの傷は綺麗に無くなった。

「・・・ヒョンのここも、こんな風に治してあげられるといいんだけどね。」

小指の傷を舐めながら、もう片方の手をドンヘの胸に押し当てた。
ドンヘを見つめたリョウクの目は普段のブラウンアイではなく、碧色に光を放っていて、記憶の中の母と同じその色に何だか懐かしさを覚え、暖かい気持ちになる。

その刹那、窓もドアも開いていないのに、部屋の中を風が吹きぬけ、その冷たさに・・・長兄の登場を感じ身の竦む思いがするのだった。
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Comment

おじょー様

どーしても様づけしたくてwww。
別に下僕を希望している訳ではないです( ^ω^ )

> この感動をお伝えしたいのに自分の語彙力の無さが恨めしい...( ;∀;)ww

いや、字面で興奮加減伝わっています。
ニヤニヤしてるのをお見せ出来ないのが残念。
……いや、見たくないですよね?

> ファンタジーヲタなので

そんな括りがあるの⁈
ふふふ、私なにヲタだろう?
活字中毒の妄想癖患者なのは間違いなしです。

ありがとうにありがとうございま〜す‼︎
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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