another ocean #8

2012.10.15 20:42|☆another ocean 【完】
another ocean

KyuHyun side

窓を開けると、昼間の熱を残した風が頬を撫でる。
月のない夜の高揚感が、その不快さを消し去っていた。
かつて無いほどの乾きと餓えに、体の奥がうずく。
自分ですらこうなのだ。
食事を拒否している次兄ヒョクチェの飢餓感は、どれほどだろうとキュヒョンは思う。
無性に気になり足早に部屋を出て兄の部屋へと向った。

ヒョクチェには何かと突っかかることが多いキュヒョンだが、兄はそれを楽しんでいるような素振りをみせてくれる。
父母を覚えていない自分には兄達がその代わりであったし、父の代わりに一族の重責を担うようになり忙しく飛び回る長兄イトゥクに甘えるわけにはゆかず、かといって他に甘えられるほどの関係を築けるほど、人付き合いの上手くないキュヒョンの捻じ曲がった甘えの矛先はヒョクチェただ独りに向うのだったが、そのすべて受け入れてくれ正直有難い存在だと思う。
長兄の部屋の前を通り過ぎ、その隣のヒョクチェの部屋の前まで来ると、礼儀として形ばかりのノックをしてそのドアを開けた。

ベッドの上に、折り重なるように兄達は居た。

「・・・シウォニヒョン?」

呼びかけるとすぐ上の兄は、組み敷いたヒョクチェの体から自らの体を引き剥がし、ベッドから降りるとこっちへ向ってきた。
深紅に輝く眼の色と、口の端から滲む赤に思わず息を呑む。

「・・・ヒョン・・・。」

僅かながら・・・いつもより青白くなったシウォンの顔色で、食事をしに行こうともしないヒョクチェに、食べさせていたのだと気付く。
紳士的で優しい兄シウォンがそうせざる負えないほど、ヒョクチェの状態は悪かったのだろう。
そっと手を伸ばし、その口の端についた血を指で拭って・・・それを自分の口に運んだ。

「お前も凄いことになってるな。」

この渇きのせいで様相が変わってきているのだろう。
自分の眼もシウォンのそれと同じように光を放っているようだ。

「そうですね・・・ちょっと、遊びすぎましたね。ドンヘヒョンの誘いは要注意です。」

そういうとクスッと笑う。

「食事しに行って来る。・・・お前も余裕があるなら・・・。」
「分っています。僕のも食べてもらいますよ。」

そう答えると、今度は片方の口角を上げてニヤッと不敵な笑みを浮べた。

「ヒョン、気をつけて・・・じゃないか、楽しんで来て。」
「お前も。」

シウォンが部屋を静かに出て行った後、ベッドサイドへと歩を進める。
苦しんでいたのだろうか、乱れたシーツの上に力なく横になっているヒョクチェが居た。

「・・・お前も、俺に無理やり食わせるのか?」

シウォンの拘束はまだ溶けていないらしく、薄く開けた目の端でキュヒョンをヒョクチェは睨みつけた。

「・・・じゃぁ、ヒョンから食べてくれます?」

そういって首筋を差し出すと舌打ちで拒絶を表した兄。

「・・・はぁ・・・じっとしていてくださいね。俺、体力あるほうじゃないんで。」

そういって、シウォンがしたであろう事を・・・自らの口腔内を噛み切り、流れ出た血液を唇を合わせてヒョクチェへと流し込んだ。
自身の体からヒョクチェへ向って流れ出ていく・・・赤みがさしていくヒョクチェの頬とは裏腹に、自身の指先が痺れるほど冷たくなっていくことをキュヒョンは感じていた。




「・・・っふ・・・ははは・・・。」

乾いた笑い声が闇の中で響いて・・・溶けて消えた。
自らの失態に笑うしかないキュヒョンが居た。
「今夜は遅くなります。」ヒョクチェにそう言って家を出た後からの記憶が曖昧で、何処へ行ったのか、食った人のその生死はもとより、そもそも何人食ったのか、何一つ覚えていなかった。
そして・・・どうして傷を負ったのか、自宅へ帰らずどうしてリョウクの家に来たのか・・・まったく分らない。
窓が開け放たれ、微かな明かりが漏れているリョウクの部屋を見上げる。
そのバルコニーに身を躍らせると、その内側に力なくズルズルとしゃがみ込んだ。

微かな星明りの中、胸を押さえていた自身の手を見つめる。ヌルッとした感触と共に赤黒く光る手がそこにはあった。
正しい方法で撃たれない限り、修復してしまうこの体も・・・そこそこダメージをくらったようで、軽い眩暈を覚える。

的確に心臓を抜かれたな・・・。
軍関係者だったのか?撃たれた瞬間、振り返って放った“刃”で切り裂いた男の映像が頭の中に現れ・・・このイメージが自身の想像でなければ、目撃者は処分できたであろうとキュヒョンの頭は目まぐるしく今置かれている状況を分析していた。

大丈夫だ。

イトゥクの手を煩わせる事態には至っていないはずだ。
部屋の中から柔らかいピアノの音色が聞こえる。
眼を瞑ってゆっくりと呼吸をする。

今夜はリョウクに声を掛けるつもりはなかった。
ただ、体力を取り戻すまでの間、ピアノの音色に包まれていたかった。
ピアノの音が止まり、「どうした?」と呟く甘い声が聞こえる。
リョウクの部屋に・・・いつも兄ヒョクチェの元へ出かけているドンヘが居ることに動揺する。
気付かないでくれという願いは「キュヒョナ?」とリョウクの発した言葉で断たれた。

「キュヒョナ?・・・キュヒョン、居るのか?」

そう言うドンヘの声が近づいてきたが、今のキュヒョンには瞬時に消えてしまえるほどの体力は残っていなかった。眼を開いて、掃きだし窓を見ていると、ドンヘの姿が現れた。

「キュヒョナ!!」

大丈夫かと叫ばれ、肩を掴まれる。
その衝撃で走る激痛に小さく呻いて眉をしかめると、心配そうに眉を寄せさらに垂れ目になったドンヘと、その後ろに口元を押さえて立ち尽くしているリョウクが居た。

「・・・大丈夫です。・・・ただ、もう少し・・・このまま。」

そう言って片方の口角を上げ、精一杯笑って見せる。

「パボ・・・見せろ。」

抵抗するまもなく服をたくし上げ傷を確認するドンヘ。
背中と胸に小さな穴が開いているのを確認して「良かったな。」と呟いた。

「・・・何が良いんですか?」
「貫通しているからさ。残っていたら出さなきゃいけないだろ?穿られたかった?」

そういってニヤッと笑う。

穿る?傷は塞がっていくが痛みは感じるんだ、冗談じゃない。

そう思っていると「いやー・・・お前の悲鳴が聞けるチャンスだったのにな。残念。」といつもの仕返しとばかりに嬉しそうに笑いながら、キュヒョンの服のボタンを外していく。

「・・・何してるんですか」
「ん?脱がしてるの。」

微笑む無駄にイケメンなこの男の言っている事が理解できない。

「何のために。」
「塞いでやるよ、それ。」

塞ぐ?どうやって?

その問いを発する間もなく、手早く服を脱がせたドンへは、肌蹴たキュヒョンの胸の上に左手を突き出すと、その手首に右手の小指を当てる。

「ヒョン、僕が。」
「駄目。俺も出来る。それにリョウクはすぐに疲れちゃうだろ?」

ニッコリ笑って、盛大に手首を掻き切るとボタボタと滴る鮮血を傷口の上に注がれた。
ジュッという蒸発するような音と煙が上がり、傷口に熱を感じたかと思った瞬間、まるで何も無かったかのように消えていた。
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Comment

No title

まだ読んでる途中ですが・・・。(以前も途中まで読んで、充電が切れました)
エロいシーンが無いのに、なぜかエロい。
参ります・・・。

え!!(°°;)"((;°°)

LIKYさんコメントありがとうございます。
読み返しました・・・エロかったっけ?参るって・・・どこにぃ!!
・・・結論、この兄弟が発してるエロスってことにします(笑)
私のムッツリ加減がにじみ出ている・・・のかも。いいさ、どうせ○態さ、エッヘン!
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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