another ocean #11

2012.10.21 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean

ShinDong side

昼過ぎになって、ガチャっと玄関の開く音がして、レポートの手を止めて振り返ると、同室のソンミンが帰ってきた。

「お帰り。」そう言うと、
「ん。」と返事をしてシャワーしてくると浴室に向っていった。

そういや昼食を取っていなかったことに気がつき、キッチンへと物色をしに行く。
有りものでキムチチャーハンぐらい出来そうだなと思い、浴室へ行って扉越しにメシを食ったか聞くとまだだという返事が返ってきた。
料理は得意ではないが・・・この程度なら何とかなる。
格闘の末、出来上がったものをテーブルに置きスッカラを用意していると、髪から水を滴らせたソンミンが浴室から出てきた。

「うまそー。」
「お前、片付け係りだから。」
「ゲッ、最悪。お前の後、キッチン酷いんだぞ。」
「なら食うな。」
「・・・いただきます。」

食事を楽しむというよりは、食べ物を胃袋へ送るという行為を行うソンミン。
いつもなら課題のレポートについて、あれこれ考察をめぐらせながらディスカッションを繰り返しながら食事を取る。
同じメディア専攻に所属しながらも映像を制作する側のドンヒと、演じる側のソンミン。
捉え方の違いが面白く長年の友人であることも相まって、とうとうルームシェアするようになった。
ソンミンといると刺激が多いと感じているドンヒに、ソンミンもまた同じ事を言うのだった。

「どのくらい進んだ?」

いつもと変わらない話をしようと課題のことを振ると、『お前は?』とかえされた。

「んー・・・まだ書き始めたとこ。」
「俺・・・構想だけ・・・。でも・・・どうでもいいかな。」

本人が言うには興味の範囲が広く飽きっぽいというが、興味を持ったことを深く突き詰めて考える繊細なタイプのこの男には、珍しい思考の放棄の仕方だった。


「・・・大変だったな。」
「どっちの意味で?兄貴達が死んだこと?それとも容疑者になったこと?」


顔をあげると、射るような視線で俺を見つめるソンミンと目が合う。
美しく整った小ぶりな顔は、ここ数日の疲れでやつれてはいても相変らず美しかった。ただ・・・悲しいほどに、冷たく乾いた目になっていた。

「おい。」
「・・・ごめん。聞き流して。」

目を伏せ、食事を続けるソンミンにゆっくり食えよと声をかける。


一週間前、男女三人が殺される事件が起った。
1人はまだ十代の少女で、凄惨極まりない事件はマスコミでも大々的に取り上げられた。
何より人々の目を惹いたのはその猟奇的な手口で、男性は体を大きく切り裂かれ死亡していた。
事件翌日、捜査当局は事件当日、犯行時間帯にその家を訪れていたその男性の弟を重要参考人として拘束したとマスコミを通じて報じた・・・それがソンミンだった。

一度容疑者と目をつけられたら、それを覆すのは用意ではない・・・新たな犯人が見つからない限り。
ソンミンも何度も自分じゃないと否定したことだろう。
実際、シンドンもなんども事情を聞かれたし、警察署に陳述に訪れていた。
兄貴がソウルに戻ってくるのを楽しみに待っていたと、再会を嬉しそうに話してくれたこも。
あの日、確かにソンミンを迎えに行ったと。
その時の様子に変わりは無かったから、そんなはずは無いし、有り得ないと。

取り付く島も無かったのに・・・何故急に釈放されたんだ?

「・・・よく、釈放してもらえたな。」
「・・・ほんとにね。」
「何にも説明無いのか?」
「うん。無い。」

まるで犯人かと思うような扱いをうけ、報道されたにも拘らず、何のコメントも無しにもういいと?
実名報道はなかったものの、ソンミン個人を特定できるような報道は幾つもあった。
口が裂けてもソンミンに言うつもりはないが、大学にまで報道陣が詰め掛けていたのだ。
これから・・・どうやって・・・名誉回復をすればいいというのだろう。
腹の中のよじれるような怒りを宥める様に、コップの中の水を飲み干した。

「・・・死因が分ったんだ。・・・ヌナとアンリの。失血死だって・・・。」
「失血死?」
「兄貴のように切られたわけでもないのに・・・失血死だって。兄の傷も・・・どんな刃物で切ってもあんな風にはならないらしい。・・・これがどういう意味か・・・わかるよね?」


―――・・・伝説じゃないのか?


「迷宮入りする猟奇殺人のうちの幾つかに・・・同じ傾向があるらしい。首もとの小さな傷、失血死・・・まるで雷にでも打たれたかのように切り裂かれた体。なぁ、ドンヒ・・・これは、現実のことなのか?そんな事って・・・あると思うか?そんなんじゃぁ、犯人なんて永遠に捕まりっこない・・・いや、警察に捕まえられるわけが無い!」

呆然とソンミンを見つめていると、片方の口角を上げて『信じられないって顔だな。』と言った。

「・・・お前の話が信じられないんじゃなくて・・・」
「分ってる。こんなこと、本気で信じたらいかれた野郎だ。」

そういってグラスを掴むと、コップの中の水を一気に飲み干した。

「・・・信じてくれなくていい。」
「ソンミナ・・・。」
「今話したこと・・・信じなくていいから。出来るだけ・・・早く忘れて。・・・これからの俺の行動も理解してくれなくて良いから。・・・ただ・・・気が狂ってるわけじゃないから、それだけは安心して。」

そして、無表情のまま『ごちそうさま、うまかった』そう言って席を立って食器を片付けた。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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