another ocean #17

2012.10.27 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean
kyuHyun side

―――ここ・・・か。

自分自身の匂いを辿ってやってきたキュヒョンは、1つのアパートの前で足を止める。
記憶の欠片も出てこないことに呆然とするが、濃厚な血の匂いに自分自身の匂いが紛れていることに、ここなんだろうと確信する。
まだ僅かに嗅ぎ取ることの出来る気配から、男女三人がここで死んだ・・・いや、俺が殺したんだと思う。
長兄イトゥクからペナルティをくらっていた間に、季節は移り変わろうとしていた。
刺すようだった日差しは和らぎ、街路樹も色づき始めていた。

目を覚ましたイェソンが取り成してくれなかったら、まだ地下に閉じ込められていたかもしれない。



普段は何をしても笑っている兄が、あんなに怒るのを見たのは初めてだ。
ドンヘとリョウクの兄、ヒチョルがそうしたように・・・怒涛のように怒鳴り散らされるのも勘弁して欲しいが、イトゥクの静かな怒りは・・・背筋が凍りついた。
宥めに入った二人の兄を視線1つで凍りつかせ、自分が元凶だと食い下がったドンへを退けた。
身内に対しても容赦の無い制裁・・・だからこそ“イトゥク”が務まるのだろう。
闇に慣れているとはいえ、月明かりや星明りも届かない地下室は物音1つすらせず・・・完全な闇で酷く怖かった。
死とはあの先にあるものなのだろうか・・・それとももっと・・・柔らかいものなのか。


闇の中で繰り返し思い出していたのは・・・すがりついた1つの背中・・・抱きしめられた1つの腕だった。
兄達の誰かだろうと思うが・・・その顔がなぜか途中からイェソンに摩り替わる。

『大丈夫。にぃにがいるだろう?目をギュってしててごらん。ほら、何も怖くない。』

呪文のように聞こえる声と、抱きとめられた腕の温かさを思い出すように、膝を抱えて顔を埋め座り込んでいた。

扉があいて・・・入って来たイェソンに抱きしめられ、確証に変わる。
あれは・・・兄達じゃない。
この人だ・・・イェソンだ。
なぜ・・・いや、あの映像と共に思い出した泣き声は?俺?・・・リョウクか?
この人は・・・何から俺たちを守っていたんだろう・・・。俺は・・・何を忘れ去ってる?

イェソンの顔をじっと見ると、『お前も、まだ思い出さなくていい。・・・そのうちヒョン達から聞けるさ。』と言った。


地下から出ると、大げさにシウォニヒョンに抱きとめられ、ドンヘヒョンに泣きながら抱きつかれてもみくちゃにされる。
少し離れたところに腕を組んで立っているヒョクヒョンに助けを請うが、「やりたいようにさせてやれよ。」と突き放されてしまった。
実の兄に放置されイェソンを見ると、苦笑いを浮べている。
・・・何処となく顔色が優れない。傍らに支えるようにリョウクがいた。
リョウクの耳元で何かを呟く、逡巡した挙句、こっちへと歩み出たリョウク。
『助けてやれ』とでも言ってくれたのだろうか。
数メートルの距離を、リョウクは何度もイェソンを振り返りながら近づいてきた。

リョウクって・・・こんな印象だったか?
その雰囲気は何だろう。

イェソンはそんなリョウクを見つめ返し、踵を返してトゥギヒョンの傍に行き、なにやら二人で真剣な顔をして話し始めた。

「ほら・・・ドンヘヒョン、キュヒョンが迷惑だよ。」

そういって俺の体からドンヘをひっぺがしたが、まるでくっついていないと生きていけないなんとかっていう魚のように『リョギ~』と抱きつく。

「・・・はいはい。ほら、キュヒョンに言う事があったんじゃないの?」

背中をトントンとしながらいうと、はっとして俺に向き直る。

「キュヒョン、本当にゴメン。」そう言って深々と頭を下げた。
「え・・・ちょっと?なんでヒョンが謝るんですか?」
「だって・・・俺がプールになんて誘ったから・・・。」

どんな風に考えたら、ここまでバカ正直になれるのか教えて欲しい。
シウォンとヒョクチェを見るが、二人とも助けてくれる気配はない。
ドンヘの気の済むように・・・って所だろうか。
まったく・・・あなた達は弟よりドンヘですか。

「ヒョン、頭を上げてください。」
「嫌だ。許してくれるまで、ずっとこうしてる。」

まるで駄々っ子だ。リョウクをみると『ごめんね』と笑っている。
はぁと大きく息を吐いた・・・正直面倒くさい。

「ドンヘヒョンのせいではありませんよ。俺の・・・ミスです。「でも、俺が」 いいですか、一回しか言いません、あれは俺のミスです。シウォニヒョンと二人同じ間違いを犯したのなら、ヒョンのせいかもしれませんが、俺だけです。当然、一族のルールを破っていますから、罰は存在します。俺はそれを受けなきゃいけないし、トゥギヒョンは罪を課さなきゃいけない立場です。ただそれだけです。謝ってもらう必要もありませんし、許す許さないではありません。」
「でも・・・。」
「ドンヘ、その辺にしとけ。キュヒョンが困ってる。」

イトゥクとの話は済んだのか、そう横槍を入れてくれたイェソンにホッとする。
立ち上がり帰るぞと声をかけドンヘに抱きつかれている。
反動で体が大きく傾き、リョウクが慌てて手を伸ばした。

「お前は・・・。加減というものを知らないのか。・・・キュヒョン、また来いよ。」

そういってドンヘを引きずりながら、反対側にくっつくリョウクの頭を撫でて出て行く。
兄弟に甘えっぱなしのドンヘも、弟に甘いイェソンにも・・・ツンデレなリョウクにも驚く。

「・・・ヒョン、俺今面白いもの見ました。」そう呟くと、俺もと二人の兄から声が上がり、
「あひゃひゃ・・・変わらないなぁ。」というイトゥクの楽しげな笑い声が久しぶりに家の中に響いた。




―――帰ろう。

日差しが和らいだとはいえ、前回の失態を考えると慎重にならざる終えない。
それに・・・道端に佇んで、不審なことこの上ない。
来た道を引き返そうかとも思ったが、そんな気になれず・・・アパートの前を通り過ぎ、ゆっくりと下りながら緩やかにカーブしている並木道を行く。
カーブに差し掛かるところで、ガードレールに腰掛けた人がいた。

―――綺麗な顔をしている・・・男か、勿体無い。・・・女だったら、美味しいだろうな・・・。

色白な上、整った目鼻立ち。背丈はリョウクくらいだろうか。
小柄なのに、がっちりした肩幅が男だと主張する。
なんとなく視線を感じるが・・・どこ見てるんだろう・・・俺?俺どっか、怪しかった?
一歩近づくたびにドキドキしたが・・・その視線の先は自分のずっと後方に向けられていることにすれ違う時に気付く。
その視線の先が気になり、通り過ぎたのになんとなく振り返る。
その先には、さっきまで自分が見上げていたアパートがあった。
誰か待っているのだろうか?恋人?切なそうな目の色が気になった。
前に向き直ろうとした時、視界の隅でその男が頭を抱え込んだかと思うと、ズルズルと床に座り込むのが見えた。

「あの・・・大丈夫・・・ですか?」

気が付いたら駆け寄って、声をかけていた。

「・・・大丈夫・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

青白い顔に汗が浮かんでいる。気分でも悪いのか・・・というか・・・俺、どうしたんだ?見ず知らずの『人間』に・・・どうかしている。
これはきっと、あれだ・・・どっかのヒョンのバカが移ったんだ。

「・・・大丈夫そうじゃないですよ。・・・立てますか?あ、ちょっと待ってて下さい。」

近くの自動販売機に駆け寄り、ミネラルウォーターを買い封を切って差し出す。

「少し飲んでください。すっきりします。・・・家、近くですか?送ります。」
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Author:ぶひひ
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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