another ocean #19

2012.10.29 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean

SiWon side

「上手く出来ないんだ。」

そう言ってソファーの上で膝を抱えるドンヘになんていっていいか分らず、ウニョクを見つめると『放って置け』と目で告げられる。

「・・・まぁ、初めから上手く行かないさ。」
「・・・でも、俺が上手く出来ないからヒチョルヒョン戻ってこないし。俺じゃ駄目なんだ。」

そうなのか?とウニョクをみると『俺が知るかよ』と返される。

確かに・・・。ヒチョルが家に来て随分になる。
今までも時々居てるのは気配で感じていたが、トゥギヒョンの出かけた後も滞在するようになったのはイェソンが居なくなってからだ。
キュヒョンが地下から出てこれた・・・正確にはイェソンに取り成してもらった日から数日後、イェソンはお祖母様に会いに出かけたとか。

「・・・ごめん、なんていったら良いか分らない・・・。力になれ無くてごめん。」

ドンヘの肩を抱き、その額に口付ける。『ん。』とくぐもった声が返ってきた。

「シウォニヒョン、甘やかしたら駄目だよ。その鬱陶しい潮風たっぷりのジメジメ男は放っておいて。」

酷い言われように思わず噴出して顔を上げると、トレーにボトルとグラスを乗せてリョウクがやってきた。

「おい、リョギ。なんだよ!」
「だって、本当のことじゃん。」
「お前それが兄に対する「ほら、ここ来なよ。」

そう言ってピアノの前に座り、自分の横をポンポンと叩く。

「リョギ?」
「手伝ってあげるから。・・・もっとも僕じゃパワー不足だろうけど。」

そう言って鍵盤に指をすべたらせる。少し、室内の空気が和らいだ。
腰を上げてリョウクの横へ行き、躊躇なくその演奏に合わせるようにドンヘも音を奏でる。

「・・・あいつも弾けるんだな・・・。」

そうウニョクが呟く。ウニョクも知らなかったことに驚き目を剥いていると、

「俺が知っているんだったら、当然お前の知るところと成るじゃないか。」と呆れた顔をされた。

ーー―なるほど。そりゃそうか。俺らいつも一緒だしな。

テーブルの上にリョウクが準備してくれた、抽出液のボトルを掴むとグラスに注ぎいれる。

「楽しそうだな。」
ウニョクに渡すとピアノを弾く二人を見つめたままそう言った。

テクニックのあるリョウクが下の音でしっかりとドンヘの旋律を支えている。
いつに無く真剣な表情のドンヘに、ああいう顔も出来るんだと思う。
俺らの前ではいつも笑ってるか、泣きそうな情けない顔をしているかだったから。

「兄と弟が逆転だけどね。」

そう言うと確かにと肩を揺すって笑った。
最近ヒョクチェは良く笑うようになったと思う。
それは最近のドンヘの奔放ぶりも関係しているんだろう。
リョウクが落ち着いてから、ドンヘは何処へ行くにもリョウクを伴っていた。
甲斐甲斐しく面倒を見るというよりは・・・その反対、付いて来て貰っている感がたっぷりだけれど。
それでも、こぼれるリョウクの笑顔を見て嬉しそうにドンへが笑うのを見るにつけ、ヒョクチェも自分も思わず頬が緩むのだった。
キュヒョンに言わせれば、どんだけドンヘが好きなんですか・・・・と呆れた顔で冷たい視線を投げてくることは分っているが。

俺らはそれで良いんだよ。

いつの間にか二人の声が重なる。
奏でているピアノの音とは逆に、ドンヘの低く甘い声とリョウクの澄んだ高い声。
歌詞も何も無い・・・ただのハーモニーなのに、心が凪いでゆく。
窓を開けた覚えは無いのに、部屋の中に風が起こり、何処までも澄み渡っていく。
空気の粒まで見えそうだ。キラキラで・・・サラサラだ。

「やった!!」

そういってドンヘが目を輝かせているから、これがこの家のいつもの空気なんだろう。

「・・・問題は、どのくらい持つかだよねぇ。・・・一晩中歌ってなきゃいけなかったらどうする?」
「えー・・・やだよ。」
「歌は好きだけど、僕もヤダ。・・・ヒョンに本渡されてたじゃん、書いてないの?」
「・・・全部読んでない。」
「はぁ?有り得ない。」
「だって・・・眠たくなる。」
「それで出来ないなんて・・・呆れる。」
「まぁ、出来たからいいじゃん。」

演奏は止めずに、ピアノの前で子どものように言い合う二人。

「シウォナ、トゥギヒョンに連絡してやれ。」

トゥギヒョンからヒチョルヒョンに話は伝わるだろう。
携帯を取り出し操作する。すぐに『今から行く』と連絡が来た。

「最近、キュヒョン見ないんだけど、どうしてますか?」

リョウクの問いに思わずウニョクと顔を見合わせる。

「・・・1人でほっつき歩いてるみたいなんだ。」
「・・・そう。」
「寂しい?」
「・・・ううん。顔が見えないから、どうしてるかなって。」
「リョウク、違うよ!」

鍵盤に視線を落すリョウクの顔を下から覗き込むように首を折り、ドンヘが大きな声を出した。

「え?」
「今、お前・・・前にヒョンを食べてるところ見られたからって思ったろ?それ、絶対に違う!」
「・・・。そんなのわかんないじゃん。」

すごいタイミングで、思わぬことを言い出したドンヘに、やっぱりこいつはリョウクの兄なのだと感心する。
「ドンヘの言う通り。俺らだって食うのに、人の食事見たからって変わるわけ無い。きっと面白いゲームにでも夢中になってるよ。」

なぁ、とウニョクに同意を求められ、あぁと頷く。

正直・・・キュヒョンが出かけてる先は、ここだと思っていた。
だからこそ、今日訊ねてきたのだ。
ここじゃないなら・・・何処へいってるんだ?
贅沢にもリサイタルのような演奏を聞きながら、その明るい曲調とは反対にシウォンの胸に一抹の不安が過ぎった。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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