another ocean #22

2012.11.02 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean
SungMin side

「ソンミン。」

そう呼ばれて振り返ると、すっかり葉を落とし寂しくなった街路樹の下で寒そうにマフラーに顔を埋めるキュヒョンの姿があった。

「あぁ。上がる?」

ちょうどコンビニで食料を買ってきたところだった。

「うん。」
「・・・コーヒーぐらいしかないよ。」
「何でもいいです。」

玄関で靴を脱ぎ、ポットに水を入れお湯を沸かす。
「・・・随分片付きましたね。」

俺の横に来てシンクに凭れて部屋を見回し言った。
多額の荷物の処分費用と業者によるクリーニング代金を請求され、記憶の新しいうちはどうせ借り手がつかないんだからと自分達で処分するから待ってくれるようシンドンが交渉し、渋々了承を得ていた。

「うん。先週ドンヒがトラック借りてきてくれて、一気に片付けたんだ。キュヒョンもありがとう。」
「えっ?」
「手伝い。・・・それに、気にかけて来てくれてるんでしょ?」
「・・・そんなんじゃ・・・ありません。」

はいと差し出した紙コップを、どうもとそっけなく受け取るが・・・髪からのぞく耳が少し赤い。
紙コップの中のコーヒーをふうふうと息を吹きかけ覚ましている。
この1ヶ月余り、この部屋に来るたび、キュヒョンと出会う。

『通りがかったら、窓開いてましたから。』

そういってそっぽを向くが、心配してきてくれているのだと思う。
あれから知ったキュヒョンのこと。
キュヒョンは、陶器で出来た人形のように白い肌で、緩い巻き毛の黒い髪がそんな顔を縁取っていて、形のいい眉毛と、すっと通った鼻筋で、口角の上がったアヒル口で、夜のように黒い瞳は時々優しく煌く。
ぶっきら棒に、そっけなく振舞うが、照れ屋で優しい。
ふらっと昼過ぎにやって来て、片づけを手伝ったり、なんてことは無い話しをして夕方には『じゃぁ』と帰っていく。
幾度も夕食に誘ったが、『そうですね・・・また、そのうちに』と言ったきり実現したためしがない。

―――彼女がいるからだよね?・・・そりゃそうか。

ソンミンはこんなにカッコいいんだからいないわけが無いと思うと同時に、気持ちが重く塞がるのを感じた。

どうかしてる・・・まるで、恋をしているみたいじゃないか。
今・・・なんて?・・・恋?!・・・嘘だろ。
ソンミンは自分自身の思考に驚愕する。
だって・・・キュヒョンはいいやつだが・・・男だ。
今まで、一度だって・・・男をそう言う対象に見たことなんてない。


いや・・・これからだって・・・金輪際有り得ない!!


「・・・ソンミン?どうかした。」

横にいるキュヒョンに顔を覗き込まれ、『うわぁ』と叫び慌てて飛びのくと、手にしていた紙コップからコーヒーが飛び散った。

「っち!!」

横から伸びてきた手に捕まれ、蛇口から水を勢いよく出すとその中で患部を冷やす。

「・・・ったく。何してるんですか。」

キュヒョンの声が耳元で響く。触れられているところが熱く、背中に・・・キュヒョンの胸を感じ、キュヒョンの胸の中にいるこの状態に息をするのも忘れる。
ソンミンは自身の変化に気付かれないよう、至って通常の呼吸をするように勤める。
自分の心臓の音が漏れ聞こえてしまうんじゃないかと、酷く混乱した頭でソンミンはその事だけが心配になる。
自分の右手を両手で包むキュヒョンの手に、この体温の変化がわかってしまうんじゃないか、この心の動きを知られてしまうんじゃないかと。
いっそこのまま心臓が止まってくれたら、そんな心配をしなくていいのに。もう・・・だめだ。恥ずかしい。

「・・・自分で出来るよ。」

変化を悟られないよう、感情を殺した声を出すと、それは自分が思ったよりも冷たく響いた。

「・・・ですね。」

キュヒョンはあっけなく自分を手放すと雑巾を探し出し、床を拭った。

「じゃぁ・・・帰ろうかな。」
「・・・お前さ、いつも・・・何しに来てるの?」そう問う。
「さぁ?あなたの顔を見に・・・ですかね?なんだか・・・1人で泣かせているような気がして。」

そう言って『手、もういいでしょ?』と蛇口を奪い雑巾を洗い始めた。


―――もう、いい。


キュヒョンがどういうつもりで今の言葉を吐いたのか、その心の中までは分らないが・・・十分だ。
これが・・・恋でなくてなんだって言うんだろう。
今のキュヒョンの言葉一つ一つを心臓に刻み込みたいほど嬉しいのだから。

雑巾を黙々と洗うキュヒョンの顔を見つめていると、「・・・なんか言ってくださいよ。俺独り恥ずかしいじゃないですか。」とボソッと呟いた。耳が真っ赤だ。

「ふふふ。男相手にいうセリフじゃないね。」
「・・・うるさい。帰る。」
「はいはい。」

そう言って手近にあったかばんを掴み、窓を閉めた。

「もう良いの?」
「うん。今日は計測しにきたんだ。再来週からリフォームに入るから。」

靴を履いて玄関をでて鍵をかける。

「・・・なんでもするんですね。」
「うん、と言いたい所だけど、出来るようになったの。撮影とかするとセットとかも自分で組まなきゃいけないしね。本当に何でも出来るのはドンヒだよ。あいつ、本当に器用だよ。俺助手。」

階段を降り切った所でキュヒョンが急に立ち止まるから、その背中に顔をぶつける。

「って・・・お前ね。?・・・キュヒョン?」


「・・・リョウク。」


ぽかんと口を開けたキュヒョンの視線の先に、ガードレールに腰掛けて体を預け、両手を組んで俯いている男の子が居た。
ふと視線を上げて、キュヒョンを見つめると小さく片手を上げ、そっと笑った笑顔は・・・壊れそうに儚かない。
キュヒョンのように白い肌に、色素の薄い茶色い髪は緩くウェーブがかかっていて、形のいい目が愛らしい男の子。
立ち上がろうとして姿勢を崩したのか体が傾く。


『あっ。』


俺の言葉よりも早く、駆けていったキュヒョンがその体を支えた。
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Comment

No title

コメしないかもなんて言っといて 早速きちゃいました(^^ゞ
いや~ん キュミンじゃないですか!!
哀しい系キュミン好きです。 ミン君暗いの似合う・・・ 
ドSなぶひひさん!
覚悟してこの先も読みます(T▽T)

うれしい!!

ようこそ!!
いつもご贔屓いただきありがとうございます!!


> 哀しい系キュミン好きです。 ミン君暗いの似合う・・・

だよねぇ・・・なんでだろ?どうしても切ない系にしちゃいますねぇ。
 
> ドSなぶひひさん!

褒め言葉、ありがとうございマース!!

> 覚悟してこの先も読みます(T▽T)

ありがとうございます。ものすごく嬉しいですし励みになります。
私も、性根を入れて・・・書きますとも。
年内は『あした雨が上がったら』かな。
年明け頃には短編OurLoveでキュミン。
上手く妄想し続けられれば・・・キュミンで中編を・・・
作っていきたいなぁ・・・って。・・・多分。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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