another ocean #25

2012.11.14 20:03|☆another ocean 【完】
another ocean
ShingDong side

車を走らせながらソンミンのアドレスを引っ張り出し、電話をかける。

「・・・あ、俺。採寸できた?・・・・うん、お、じゃぁちょうどいいな。。」

タイミングのいい事に測り終えて帰っている途中だという。コンビニの前で待つように言って電話を切った。
材料は大道具を作る時にお世話になっている大工さんに、原価で分けてもらえるように交渉はしてあった。
工事も映画仲間に声をかければあと3人は集まるだろう。俺とソンミンをいれて5人もいれば3日あれば十分だ。
車はアパート前の並木道に差し掛かる。
紅葉した木々が葉を落とし、黄色や赤の色とりどりの絨毯を広げていた。
車が通るとカサカサと音を立てて巻き上がった。
信号で停止して・・・こんな色を撮影するのもいいかもな・・・とハンドルを抱いたまま構想を練る。
緩やかな下り坂が遠近感を持たせていて、伸びやかな構図になりそうだ。
ふっと前方を見ると・・・見たことがある顔が坂を上ってきていた。

―――キュヒョン・・・って言ったっけ?

自分とはあれ以来会うことがなかったが、ソンミンが言うには時々手伝いに来ていたらしかった。
ソンミンっから聞く話からするとぶっきら棒でそっけないけれど、優しい奴なんだろう。

そうは思うが・・・

シンドンは胸の中に渦巻いているこの気持ちを・・・ソンミンに伝えることを躊躇っていた。
なんとなく・・・嫌。そうとしか言いようがない。
自慢じゃないが、直ぐにだれとでも仲良くなれる性質だと思う。
ちょっと太目のこの容姿が大分役立っている。
そんな俺だが・・・あいつといると落ち着かなかった。
薄ら寒いような・・・ゾッとする感じ。
根拠も何もない、こんな感覚的な事・・・ソンミンに言ったところで一笑にふされるだろう。

今日は連れがいるらしい。
線の細い子を庇うように腰に手を回し、寄り添って歩いている。
時折その子の顔を覗き込んで、『平気だって』というところか?手で胸を押しもどされている。
この景色の中で・・・違和感がある二人。
何がそう思わせるのだろう。
何処が?
なんていったらいいか・・・リアリティ・・・そう、現実感が欠けるんだ。
映画を撮るときにも・・・キャラクター設定が浅いと、掘り下げが不十分だと、平坦な、取ってつけたようになるような感じ。
そいつ自身がそこに生きていない感じだ。

信号が青に変わり、車を発進させる。
ショーウィンドーにはハロウィンのディスプレイが施してあって、その前を歩いている二人の横を通り抜けた。

この近くに住んでるのかな?
そう思っていく先を見届けようとバックミラーを覗き、急ブレーキを踏んだ。
後続車がクラクションを鳴らして横を通り過ぎていった。

・・・嘘だろ?

そう思って振り返ると、色鮮やかな街路樹の下を肩を並べて歩く二人の姿。
そこにいるのに・・・バックミラーでは確認できないなんて・・・。
何度も目を往復させ・・・角を曲がる二人を確認すると、その後を追うため車をUターンさせた。



コンビニの前にソンミンは居た。
車を止めると『おそーい。』と言いながら、助手席のドアを開けて乗り込んでくる。

「・・・今日もあいつと一緒に居たのか?」
「うん。キュヒョンに会った?」

シートベルトを締めながら、普段と変わらない様子のソンミン。

「あぁ。・・・あいつに会うの止めろよ。」
「?ちょっと、ドンヒ・・・どうしたの?」
「いいな、もう絶対会うなよ!!」
「なんだよいきなり。何でそんなことお前に言われないと・・・」
「お前、あいつが何か分ってるのか?・・・俺は・・・確かにお前の兄貴の話、半信半疑だったよ。いや、信じてなかったって言って良い。・・・でも、今は違う。居るよ、そういうヤツ。」
「ちょっと・・・何のこと。」

助手席で体の向きを変えて座りなおし、正面から俺を見る。

「あいつ、変だ。・・・なぁ、お前の中で、何か引っかかるものがないのか?何もないか?・・・引っかかってるのは、俺だけか?あいつ・・・存在にリアリティがない。・・・お前を送ってきた日も・・・足音1つ立てずに廊下を歩いた。」

自分で言いながら鳥肌が立っていくのがわかる。
ほら・・・この感じだ。
ゾッとする。

「そんなこともあるんじゃない?」
「あのボロ屋でだぞ?」
「・・・。」
「さっき・・・横を通り過ぎた後・・・バックミラーに映らなかった。」
「へ?」
「見間違えなんかじゃない。振り返って・・・目視ではそこに居てるのに・・・ウィンドーガラスには映っているのに・・・バックミラーを覗いたら映ってなかった。・・・二人とも。」
「・・・二人とも?見間違えじゃ・・・」
「見間違えなんかじゃない。Uターンして・・・あいつらが曲がった所を曲がったら・・・姿がなかった。」
「そこが家だったとか。」

「家らしいものは無かった。」

と言って首をふると口を引き結んで押し黙った。
ギアを入れ、アクセルを踏む。
路面の落ち葉がかさかさと音を立てて舞い上がり、視界の後ろに消えていく。


「・・・あいつらかもな。」

ドンヒの小さな呟きは静まり返った車内で、走行音にかき消されることなくソンミンの耳に届いた。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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