another ocean #26

2012.11.15 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean

―――夜が始まる。

この位の時間帯が一番好きだ。
細く開いたカーテンの隙間から空の色が、茜色から群青色にグラデーションがかっているのを見てとり、気分が高揚していくのをシウォンは感じざるおえなかった。
感覚が研ぎ澄まされ、音や匂いに敏感になっていく。
シウォンはソファーに横向きに腰掛け、同じような格好でチェス盤を挟んで考え込む1つ下の弟キュヒョンの顔色を盗み見る。
普段生意気放題の我が家のマンネはこのところ嫌に大人しい。昼間は外に出るものの、日暮れ前には戻って、謹慎処分を受けているかのように家の中に閉じこもって夜間出歩くことはない。

「何ですか?」

駒から目を離さず、遠慮ない視線を送るシウォンにキュヒョンが問う。

「いや・・・最近食べに行かないなと思って。そこまで反省しなくてもいいんじゃないかな。」
「・・・欲しくありませんから。」

そういいながらもサイドテーブルに手を伸ばし、ワイングラスを手に取ると、ワインよりも赤褐色の液体を流し込んだ。

「・・・そりゃぁな。MAXまでチャージしたら暫くは要らなくて当然だろ。」

向かいのソファーで寝転んで雑誌を捲るウニョクの抉るような一言にぐうの音も出ず、黙り込んだキュヒョナ。

「ウニョガ。」

嗜めると、当然いつもの様に歯向かって来ると思っていたウニョクは、拍子抜けした表情のまま罰が悪そうに頭を掻いた。
目の前で普段の様子の欠片もない、明らかに肩を落としてうな垂れる姿が可愛く、その頭をわしゃわしゃと撫でる。

「ちょ・・・。止めて下さい。・・・はい、ヒョンの番です。・・・止めてってば。そんな余裕ないはずですよ。」

最後の言葉に手を止め、盤と向き合う。
さっきまで俺が優勢だったはずなのに・・・いつの間に形勢逆転・・・。
らしくない言動に惑わされすぎたかな?もう少しメンタルにきてるかと思ったが・・・意外とタフで、ウニョク風に言うなら、可愛くない奴だ。

「おまえさ、毎日何処行ってるの?」
「・・・どうしてですか?」

俺の質問に質問で返すキュヒョン。
答えたくないって事か。思わずはぁっとため息をついた。

「キュヒョン、聞いてるのは俺ら。」

ウニョクに言われ、真っ直ぐにウニョクを見つめたまま『言いたくありません。』と呟いた。

「・・・大丈夫なんだろうな?」
「・・・ヒョン達が心配することにはなりません。」

そう言って視線を外し黙ってしまう。
その答えに納得は出来ないが、シウォンを見つめるウニョクは、暫くはトゥギヒョンにも黙っててやるつもりなのか・・・様子見だと言いたいんだろう。瞬きで返事をすると面倒くさいことになったとでも言うように肩をすくめていた。


カタンと音がして振り向くと戸口にドンへが立っていた。
その肩が上下している、随分慌ててきたらしい。

「いらっしゃ「リョウクは?!」
「へ?」

出迎えようとした俺の言葉を遮り、驚いているヒョクチェを一瞥することもなくキュヒョンに歩み寄るドンヘ。

「キュヒョン、リョウクと一緒じゃないの?」
「・・・違いますけど。」
「じゃ・・・どこだよ。寝言で『キュヒョン、駄目』って・・・。あいつが行きそうなところってどこ?お前なんか知らないのか?」
「一体どうしたんだよ。」

一気にまくし立てるドンヘの肩に手を回したら、瞬時に跳ね除けられた。

「だめだ。・・・ヒョン・・・イェソンに連絡・・・。」

そう言って携帯電話を取り出し耳に当てるが、出られないのかコール音が鳴り続けているのが微かに漏れ聞こえる。

「出ない・・・出て・・・ヒョン・・・お願いだよ。」
「ドンヘ。落ち着けって。」
「無理。見つけなきゃ。」
「だからなんだっていうんだよ。」

ウニョクがドンヘの手から携帯を取り上げた。

「なんていったら良いか解んない。でも、やな感じなんだ。リョウクがいないのが・・・気持ち悪い。ヒョンを呼び戻せって・・・言ってるんだ。心が。早く・・・しなきゃ。手遅れになる。」

そう言って、自分の発した言葉に驚き、それを飲み込むように慌てて両手で口を押さえた。

「手遅れ?どういう意味だ。」

ウニョクの問いに両手で口を押さえたまま、首を横に振り涙目になっているドンヘ。
口に出したらいけないかのような・・・。


「ドンへ、イェソンヒョンはどこに?」
「シウォナ?」
「迎えにいって連れて帰ればいいんだろ?」
「・・・何処にいるか、俺知らない。場所知らないんだ。」
「そんなのわけもない。」

そういってドンヘの手を取ると指輪に付いた針でその指先を突き刺し、香りを嗅いだ。
ローズの香りの中にムスクのような匂いが混じる。俺たち一族とは似て非なる匂い。
個体差はあっても、この手の匂いを間違いようがない。
ポカンと口を開けているドンヘの指を口に運び、その指先に滲んだ血を舐めた。
ビリッと雷にでも打たれたかのような刺激と、背筋を駆け上がってくる衝動を抑えながらドンへの胸板を右手で押し遠ざける。

「・・・これは・・・くるわ。」

何ともいえない濃厚な香りと味に・・・体中の細胞が沸騰する感じ。
一滴なめて、半分に薄められてこれだったら・・・純血の人魚だとどうなるのだろう。
叔父が狂ったというもの分る気がする。

「シウォナ?」

心配そうに俺を覗きこむドンヘを安心させようと微笑み返す。

「・・・うん。リョウクは、ここから10km程の所に居てる。」

そう言うと思い当たるところがあるのだろうか。
パッと立ち上がったキュヒョンが風のようにドアから飛び出していった。

「イェソンヒョンはちょっと遠いな。3時間ってところかな。行ってくる。」

ウニョクを見ると「俺らはキュヒョンを追う。」と返ってきた。

「トゥギヒョンには・・・。」
「あぁ。心配するな連絡入れる。頼んだぞ。」

ウニョクの肩に手を置き、その脇をすり抜けると暗くなった空に身を投じた。
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ぶひひ

Author:ぶひひ
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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