another ocean #27

2012.11.16 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean
SungMin side

窓の外が茜色に染まる。

すっかり冷たくなった風が頬をなで、思わず身震いする。
午前中シンドンが友人達と来て、片っ端から床を剥がし廃材を持って出て行った。
明日は資材が運び込まれる予定だから、次の作業のために掃除をしていて、今日は来なかったなと開け放ったままの窓を閉めようと腰を上げた。
街路樹の葉はすっかり散ってしまっていて、もう冬だなと思う。
その木の下に佇む影を見つけ、もしかしたらと期待を込めてみつめると思っている人物より少し小さい人影。寒そうに身を縮めているのに気付くと同時にソンミンは部屋を飛び出していた。


「ありがとうございます。」

差し出したココアを両手で受け取り、ふうふうと紙コップを噴いている。

「悪いね。座れなくて。」

床を全て剥いでしまっているからコンクリートがむき出しだ。

「いえ。十分です。」

白いというより、どちらかと言うと青白い肌に緩く巻いた茶色い髪がかかり、それを右手の小指で払うとにっこりと微笑んだ。
くりっとした目に小さな鼻と口が並び、目を伏せてカップの中を見つめる様子は、儚げでなんとなく色気があって、美しい。

「・・・で、どうしたの?」
「・・・どうしたんでしょうね?分りません。気付いたらあそこに居てました。」

目を伏せると急に幼く、頼りなく見える。
『ゴメンなさい。ご迷惑ですよね。』そう呟く声にいやと返すとありがとうと言った。
再び沈黙が降りた二人の間を取り持つように“You got mail”と携帯がメールの着信を告げた。
ゴメンと謝って台所のシンクの上に置いてある鞄の中から携帯を引っ張り出し、着信をメールを確認するとシンドンからだった。

メールの内容よりも・・・『あいつ、変だ。・・・存在にリアリティがない。』先日のシンドンとの会話を思い出す。

いつの間にか窓の外は真っ暗で、明るく照らされた室内が鏡のように窓ガラスに映りこんでいる。
窓ガラスの中の彼はまだココアを吹いていて、その姿に安心する自分が居た。

ほら・・・やっぱり何かの見間違いなんだよ。寝ぼけてたとか・・・。

いつになく真剣な様子だった親友の姿を追い払って、メールで告げられた資材到着予定時間に『了解』とメールを返す。
鞄にしまうときに生じた、小さな違和感。顔を挙げガラスに映りこむ室内を凝視する。
リョウクって言ったっけ・・・カップを両手で持つ彼と部屋の中にある鏡に映りこむ自分の後姿。
やっぱり、どこにもおかしなことは無い。

ん?

振り返ると鏡にうつるリョウクの後ろ姿と鏡を見つめる自分の姿。
再度窓を見る。

・・・映ってない。

彼の後姿も映りこまないといけないはずなんだ。


『・・・バックミラーに映らなかった・・・』
『・・・あいつらかもな・・・・。』
シンドンの声が蘇り手が汗ばむ。

大きく跳ねる様に打ち付ける心臓を宥め、呼吸が変化しないように気遣う。
そおっと鞄の中に手を伸ばし、兄が最後に握り締めていた物に触れる。
指の先にひやりとした感触がその物の重さまで伝えてくる。
意を決してそれを掴むと同時に『ソンミンさん』と名前を呼ばれた。


「・・・どうしたんですか。」

銃を構えて振り返ったのに、リョウクは少し驚いた顔をしただけだった。

「なんで姿が映ってないんだ?お前・・・何者?」
「ソンミンさん、しまってください。」
「・・・あの日、ここに来たのはお前?それともあいつ?」
「・・・ソンミンさん。」
「もう一度訊く。僕の兄さんを・・・家族を殺したのはお前か?」

質問には答えないのに真っ直ぐに見つめる目の中には、悲しげな色・・・。
なぜか・・・海が見えるような気がした。

「・・・答えろ。」
「・・・俺です。」

声のするほうを向くと、肩で息をしたキュヒョンがいた。

「・・・おまえか。・・・で、次は俺って訳?」
「違う!キュヒョンは・・・。」
「リョウク、いいから。」

そういってキュヒョンはリョウクの手を引っ張り自分の背中に隠す。


ここに来るたびに、会えるんじゃないかと期待していた。
実際そうやって何度も会えたから。

惹かれ始めて・・・いや、惹かれていたんだ。
あの犬のようにクリッとした目で見つめて・・・時々悪戯っぽく笑ったあの笑顔も、照れて耳を赤くしていたのも・・・コイツの思惑通りだったって訳だ。

全部・・・全部嘘だった。

兄さんの、家族の敵とも知らずに・・・懐いているような素振りを見せるこいつに心を許して・・・自ら餌になろうとしていたなんて。
涙が溢れ、胸がくるしい・・・吐き気がする。
この気持ちは何?兄さんの敵を取れるから?それとも・・・

「ソンミン、ごめん。」
「・・・何に?」
「また・・・泣かせた。」
「どうでもいいだろ。」
「1人で泣かせないって言った。」
「もう関係ない。」
「・・・だね。引いて。ソンミン・・・終わりにしよう。」

真っ直ぐキュヒョンに見つめられ、言われて改めてこの状況を客観視し手が震える。
終わりに・・・する?俺が?キュヒョンを撃てるのか?
まるでキスを待つかのように優しい瞳で見つめられると、抱きしめられているかのような安堵感すら覚える。

「・・・開放して。」

開放?それが、俺がいつも何処か苦しそうにしていたお前にしてやれる唯一のことなの?
そうして欲しくて俺の傍に居たのか?

「やめて。やめて!やめて!!」


引き金に指を掛けるのと、リョウクの声が響いたのとはどっちが早かっただろう。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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