another ocean #28

2012.11.17 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean
EunHyuk side

乾いた音がしてドンヘとヒョクチェは部屋を見上げた。
銃声だと気が付くのに数秒を要した。

「リョウク・・・」

そう小さく呟くとドンヘはあっという間に二階の部屋のバルコニーへと身を躍らせ、ヒョクチェもあわててそれを追いかける。
室内では部屋の両端で目を見開いて立ち竦んでいる男たち。
部屋の入り口にキュヒョン・・・反対側の壁に背を持たせるようにして、小さく震えている男と・・・その間にリョウクが床に転がっていた。

「リョウク!!」

そう叫んでドンへがリョウクに駆け寄り抱き起こした。
いつも柔らかく笑っていたドンへの弟は・・・小さく呻き声を上げたものの、動こうとはしなかった。
リョウクの胸に開いた小さな穴が見る見る染みを広げていく。
その鮮やかな色とは対照的に色を失っていくリョウクの頬をドンへの震える手が包み込んだ。

小さく震えるドンヘの肩。

空気がナイフのように尖っていく・・・冷たく。
ヒョクチェはただ唖然とドンヘの表情を眺めていた。
それは、初めて目にする光景だった。
怒りで・・・ドンヘの瞳が、その周りの空気が自分達と同じく赤く鋭い光を放っていた。

いつも何があってもへらへらと笑っているやつなんだ・・・そうじゃなければ目にいっぱい涙を貯めてる・・・優しいやつなんだ。

見たことの無いドンヘの激しい怒りに・・・さして能力が高いとも思わなかったドンへのパワーに驚愕する。

空気が熱く・・・震える。

―――おい・・・ドンヘ・・・ドンヘ?

「っっ死ねぇぇぇ!!!」

刃と化した空気の固まりが、まだ銃を握り締めている壁際の男へ向って放たれる。

―――止めろ!

ヒョクチェの体は考えるよりも早く動いていた。
肩から腹にかけて切り裂くような痛みが走ったと同時に、二発目の乾いた音が背後から聞こえ、わき腹に熱を感じた。
傾いていく視界でドンヘの見開いた目と・・・目が合い、自分に何が起こったのかを理解する。

そんな顔・・・するなよ。

「・・・ヒョク・・・なんで・・・ヒョク・・・。」

フラフラと立ち上がって・・・立っていられなかったのか這うように傍にやってきて、俺の頭を抱きかかえる。
全身が焼けるように熱い。

「・・・ごめ・・・ヒョク・・・いやだ・・・どうして・・・っ。」

ドンヘの赤く輝く目から大粒の涙がポロポロと零れ落ち、ぽたぽたと顔に降り注いだ。
焼けるような痛みが・・・和らぐ。
・・・ドンヘ・・・お前の涙・・・すげぇな。

さっきの顔よりは・・・泣いている顔の方がいいって言ったら・・・お前怒るかな?

「・・・泣き虫。誰よりも・・・泣き虫なのに、優しすぎるお前・・・手、下して・・・お前・・・生きて・・・いけな・・・いだろ?」
「・・・ヒョク・・・待って・・・喋らないで。今、治すから。」

そういって俺の服を肌蹴、傷を確認する。
あっと小さく息をのんだ音がした。

「あぁ・・・ヒョン・・・助けて。」
そう小さく呟いて服を握り締める。
涙が傷口に降り注ぐ度にジュッと音を立てて少しずつ痛みが和らぐ。
それとは対照的にわき腹は火がついたように熱くなっていく。

「・・・ごめん・・・俺の血じゃ・・・足りない。あ・・・ヒョク、俺・・・食べて。」

それって・・・叔父さんをあんなんにした・・・力だろ?

「いらな・・・い。」
「ほら、早く!!飲んで、食いちぎって!!」


「ドンヘよせ。」

ヒチョルの一言に体がビクッと跳ねたドンヘ。
声のするほうへ視線を送ると兄達の姿があった。

「でも・・・ヒョクが・・・。」

イトゥクはヒョクチェの脇を通り過ぎると、真っ直ぐに壁際で蹲っている人間へと足を向け、放心状態のその手から銃身をもぎ取りシリンダーから銀色に光る銃弾を引き抜いた。

「ヒチョル・・・シルバーだ。」

ヒチョルはリョウクを抱き起こし、傷口を確認し、ギュッと眼を瞑って『あぁ。』と小さく返事をする。

「リョギ・・・助けてやってくれるか?」
「もち・・・ろん。」

そういってヒチョルはリョウクを抱き上げ傍にやってきた。

「ドンへ、ヒョクの体から弾取り出せ。」

その声はパニック状態のドンヘの耳に届くことなく、小さく舌打ちしたヒチョルはイトゥクにドンヘを引き剥がすように言い、ヒョクチェをうつ伏せに寝かせるとわき腹の傷に指を突っ込んだ。

「あ゛ぁぁぁ!!」

苦痛で反り返る背中を『押さえてろ』とヒチョルが怒鳴り、泣きながら謝り続けるドンへの手によって床に押さえつけられる。
焼かれる様な痛みが和らいだかと思うと、コンッという音が室内に響いた。
床に投げ出されたそれは血にまみれても銀色に怪しいほど輝いている。
涙に滲む視界の隅でヒチョルの姿を捉える。
この人だって・・・いくらハーフでも無傷ではいられないはずだ。
体内に残る弾丸を取り出したヒチョルの手は赤黒く焼け爛れている。
その手でリョウクの腕を掴みヒョクチェの体の上に掲げて、一気に動脈を掻き切った。
あふれ出る血液がヒョクチェへとボタボタと滴り落ち、わき腹と肩から腹にかけての袈裟懸けの傷の二箇所を塞いだ。
鈍い痛みは残っているものの、さっきまでの気が遠くなるようなものではなくなった。

「リョウクの・・・傷は?」

俺の問いにイトゥクが顔を顰めて横に振る。
『当たり所が悪すぎる。』そう小さく呟いた。

「・・・あの人・・・も。」

消え入りそうな小さな声でリョウクが呟く。
盾になったこともあり、重度ではないものの肩口を怪我しているようだった。

「お前は・・・・・・・・・分ったよ。」

リョウクの手首を舐めその血を止めていたヒチョルは顔を歪め、しばらく逡巡した後ため息をついた。
ヒチョルがリョウクを抱いて近づくと暴れださんとする男をひと睨みして凍りつかせると、その傷口にリョウクの血をたらし、『俺らのことは忘れろ。』と呪文のように呟いた。

「帰るぞ。キュヒョン、リョウクを抱いていけ。」

俺を支え立ち上がらせながらイトゥクがキュヒョンに指示を出す。
放心状態の弟はノロノロとヒチョルに近づくとその腕からリョウクを抱き取り、闇の中に掻き消えヒチョルとドンヘもそれに続いた。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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