another ocean #30

2012.11.19 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean
HeeChul side

イトゥク達なら一瞬で灰になったものを・・・首をはねるか心臓を引きずり出すかでもしない限り、俺らは死ねないのだろう。
混血であるが故に、死んでいく体と再生し続ける体。
それはリョウクにとって生きながら引き裂かれ続けることを意味していた。

流れ出る血液を止める為に傷を塞いだものの、体の中心から腐敗していくのを止めることは出来ず・・・時間を引き延ばしているだけに過ぎない。
ヒチョルは握り締めていた拳をそっと開いた。
ヒョクチェの体内に残った銀の銃弾を取り出した時、火傷のように赤黒く爛れた右手は、リョウクの血液で微かに痣を残す程度になっていた。

リョウクは何度か吐血し、痛みに喘ぎ続け、幾度も気を失い・・・そして痛みに呼び起こされた。
そしてその痛みの波に襲われながら、弟は幾度も『殺してくれ』とヒチョルの腕を掴んで懇願したのだった。

「待たなくていいんだな?」
「・・・っ!!い・・やだ・・・ヒョ・・・ン!!」

問いかけるたび正気に戻るのか、焦点がはっきりしリョウクは首を横に振ってジョンウンの名前を呼んだ。




「血・・・止まったね。」

リョウクの手を握り締めたまま、ドンヘが言う。
お前の涙は止まんねーのにな。

「流せるだけのものがもうないんだろ。」

美しく栗色に輝いていたリョウクの髪は色素を失い、艶やかだった肌には鱗のようなものが見て取れる。

・・・間に合わないか。

こんなことならもっと早く・・・母のように・・・楽にしてやったらよかったと思う。
と同時に・・・あの時ジョンウンを『待つ』と言ったリョウクの言葉に、片時も忘れ去ることが出来ないあの感触を再び味わうことを回避できたことに、ホッとしていたのだとヒチョルは自分自身の心の在り様を苦々しく思った。



「少し・・・眠ったら?」

いつの間にか背後に居たイトゥクに声をかけられ、肩に置かれた手の温もりに縋り現実から背をむけたくなるのを必死で押さえ、首を横に振った。
リョウクを痛みから解放するときは自分が・・・とこのバカは思ってくれているのだろう。
帰れと言ったのに弟共々俺らに張り付いて離れる気配はない。
傷の痛みが残っているのかソファーで死んだように動かないヒョクチェと、抜け殻のようなキュヒョン。
そして・・・全ての責任を引き受けようとでも言いたげな表情のトゥギ。

リョウクにとって本人が意識している、していないに係わらずジョンウンは特別だっただろう。
幼いリョウクには母のように全力で護ってくれる存在だったに違いない。
見てないようで見ていて、ふと気付けば傍にいて言葉少なく寄り添ってくれる存在。
ジョンウンは自身と引き換えにでも護ろうとした。父の時も、そしてついこの間も。
きっと、不器用なあいつは愛しているとも大事だとも言っていない。
笑っていれば、幸せならそれでいいと思っていたはずだ。
そんなジョンウンの後姿を尊敬とも親愛とも取れる目でリョウクが見ていたことも
・・・あいつは気付いていないに違いない。



リョウクの目が開いたものの、視線は宙に漂い、もう何も映してはいなかった。

「リョギ・・・まだだ・・・来るから。ヒョンは絶対・・・ヒョンもお前に会いたいはずだから。」

ドンヘの泣きながら訴えている声も・・・もう届いていないのだろう。
口元が緩み・・・不意にリョウクが微笑んだ。
イェソンがもどった幻覚を見ているのかもしれない。

「リョギ!」

そう叫んだドンへの肩に手を置き引き止める。
幸せそうな微笑だった。今までで・・・一番。

「・・・・・」

口元が動くが、音にならず聞き取ることが出来なかった。

「なに?リョギ、なんて?」

その口元にドンヘが耳を寄せる。

「・・・ドンヘ・・・止めろ。」
「だって・・・何か言ってる。伝えなきゃ・・・伝えてやらなきゃ・・・」
「止めろ!」
「ヒョン、伝えなきゃ!!ヒョンに・・・最後の・・・リョウクの言葉を。」

涙を流しながら真っ直ぐに俺を睨むようなドンヘの強い視線にぶつかる。
その後方のイトゥクからも視線が飛んできた。

この期に及んで・・・逃げてるのは・・・俺だけか。

「・・・どけ。」

ドンヘを脇に押しのけ、リョウクの枕元に屈む。


“・・・キスして・・・” 


確かに・・・そう呟いた。

その唇に・・・そっとキスを贈る。

研ぎ澄まされた状態で、流れこんでくるリョウクの気持ちに視界が滲む。

大事な・・・大事な・・・俺の弟。
ちゃんと・・・ジョンウンに伝えるから。
唇を離すと、再び柔らかく微笑んで・・・小さく息をついた。

「リョギ?」

ドンヘが呼びかけると小さな小さな声で「・・・ありがとう。」と呟く。
リョウクの目から一粒の大きな涙が滑り落ち、さっきまでの苦痛は嘘の様に、まるで眠るかのように・・・静かに息を引き取った。
急速にその体からリョウクの体温が消え、ガラス細工のように・・・うろこ状のものが全身を覆っていった。



「リョギ・・・やっぱり駄目だ・・・リョギ・・・。戻って来いよ。
ジョンウンには・・・お前が・・・自分で伝えろよ・・・。なぁってば。
・・・お前居なくなったら・・・あいつ、何するか分んねーよ。
俺無理だよ。あいつ怖いもん。
なぁ・・・それに・・・俺がキレてる時・・・誰が俺を宥めるんだよ。
誰がピアノ弾くんだよ。いねーじゃねーか。
ドンヘをあしらうの・・・お前ぐらいだろ。
・・・そんな鬱陶しい役、俺はゴメンだからな。
なぁ・・・リョギ・・・俺を弟も守れない役立たずのヒョンにするなよ・・・。
俺の許可も得ずに・・・勝手にどっか行くなよ!戻れよ!!」

分ってる・・・誰のせいでもない・・・でも言わずには居られない。
ドンヘに抱きとめられながら喚き散らす。

「ヒョン、リョギだって行きたくないんだっ・・・行きたくないんだよ。
そんな風に止めないで・・・。母さんのとこにちゃんと・・・行けるように
・・・送り出してやらなきゃっ・・・。ヒョン、お願いだよ。・・・言わないで。」

泣きながら縋りつくドンヘに引きずられるように床に倒れこんだ。
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Comment

はなはなさん

拍手コメ、ありがとうございます。

>大号泣ですーー(;O;)リョウクを助けて~

・・・・ですよねぇ・・・・
大号泣に・・・くふふってなってます、ゴメンナサイ。
随分と前の作品。
でも、これが初作品だったんです。
暗いお話なのにコメ、これ、すごくうれしいです。
ありがとう。
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CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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