another ocean #32

2012.11.21 00:00|☆another ocean 【完】
another ocean
Yesung side

―――そこにいるのか?

風に乗って聞こえてくる波の音に、懐かしい声が混じっているような気がした。
180度の水平線を見下ろすことが出来る崖の上で、後ろを振り向いた。

『探して』って言ったお前をあれからずっと探しているんだけどな・・・。
どのくらい時間がすぎればいいのだろう・・・。
何度夜を迎えて・・・昇ってくる朝日を恨めばいいのだろう。
『会いに行くから』っていっただろう?早く会いに来いよ。
『ここだよ・・・ここにいる』と俺の名前を呼べよ・・・。
それとも・・・俺から会いに行こうか・・・。



東の空がうっすらと明るくなっていく。
死神の手が伸びてくるかのように、悪寒を感じ小さく身震いをした。
これは、恐怖から来ているのだろうか・・・それとも無限の闇から抜け出せる期待からくる喜び?

「ヒョン!」

東の空を睨みつけるように凝視していた俺の手を、透き通るような白い肌にフワフワと緩く巻いた髪の男が掴み引っ張っている。

「・・・キュヒョン。」
「中に入りましょう。いくらあなたでも無傷じゃいられない。」
「・・・放っておいてくれ・・・。」
「やです。させません。・・・あいつはそれを望んではいない筈です。」

クリッとした黒く丸い瞳が俺を睨みつけるように捕らえ、形のいい唇が苦しそうにゆがめられる。

「ほら、行きますよ。」

そう言って屋敷の方へと促すが、俺が動こうとしないのを見て取り、深くため息をついた。

「・・・わかりました・・・じゃぁ、俺も付き合いますよ。一緒に消えてなくなりましょう。・・・ただ、苦しいの嫌なんで、あまり苦しまなくていいように先に切り刻んでおいていただけます?」

そういって両手を広げて、まるでハグでも待つかのように立ちつくす。

―――そんなこと・・・できるわけ無いだろう・・・

視線を外し下を向くと、背後で扉が勢い良く音がして、強引に肩を掴まれ疾風が通り抜けるかのような速さで、屋敷の中へと連れ込まれ、キュヒョンの手が離れる。
もうすぐ朝になろうかというのに・・・屋敷の中は暗い夜の闇に覆われていた。

―――・・・朝になど・・・なろうはずが無い。光とは無縁な生き物なのだから。

それに・・・夜空に輝いていた光まで失ってしまった今、自分は泡になることさえできない。

「ヒョン、探し出すと約束したんでしょ?」
「・・・あぁ。」
「・・・付き合いますよ。」
「お前・・・。」
「俺、“ありがとう”も“ごめん”も・・・“ばか”っていうのも忘れてたんです。」

だから、俺も会いたいんですとそっぽを向いて言う。

「・・・あの人はどうするんだ?」
「・・・ヒョンあれからどれだけ経ったと思ってます?僕らにとってはつい昨日のとこですが・・・彼らの時間は瞬きほどの間に過ぎ去ってしまいます。・・・まだ生きてるとしたら化け物です。」

自嘲気味に言った。顔は見えないが、きっと片方の口角を上げていることだろう。
そっぽを向いたキュヒョンの肩が小さく小刻みに震えているのを見て、目の前の霧が晴れていく。

俺は・・・何をしていたんだ。
失ったものの大きさに目と耳を塞いで・・・皆の気持ちなど考えもしなかった。
・・・いや、違う。
・・・おれは・・・知っていた?
気付かないフリをしていたんだ・・・皆が傷つき悲しんでいることを。
俺独りだけが・・・絶望という底の無い沼に沈んでいるのに・・・コイツだけ抜け出すなんて許さないと・・・心のどこかで思ってやしなかったか?
キュヒョンが罪悪感からあの人の手を離すだろうということも解っていて・・・止めなかったんじゃないのか。

「・・・悪い。」
「・・・何が?」
「・・・ごめん。」
「・・・だから、何がですか・・・。」

わかっているくせに、鈍感な振りをし続けてくれる。

「・・・きっと・・・また会えるさ。」

キュヒョンの肩に手を回し抱き寄せた。

「・・・えぇ・・・それこそ、何度でも・・・何十回でも。」


・・・もう数えることはやめよう。
何年、何十年過ぎようと構わない。
お前を探す時間は俺にはいっぱいあるんだ・・・それこそ、永遠に。

『なにそれ・・・会えそうにないじゃん。』って声が聞こえる。
いや、そう言う意味じゃなくって・・・勿論探し出すんだが・・・キュヒョン風に言うならゲームオーバーにはならないって意味で。
お前はここに居なくても・・・ここに居るんだな。
そっと胸元に埋め込んだアクアマリンに触れる。



―――そこはどんな所なの?   いつだったかそう電話で聞いたよな?

「磯臭くて・・・風がベタベタするところだぞ。」

声に出ていたようで、ソファーに転がっていたヒョクチェが驚いて飛び起きた。
キッチンでコーヒーを入れていたドンヘがマグカップを二つ持ってきて、後ろから抱きつきながら『はい』と差し出してきた。

「で?何の話をしていたの?」
「電話で話していた時に、どんなところか聞いてきたんだ。」
「ふうん。で?リョウクはなんて?」
「・・・海の傍だからあたりまえだろって。」
「あはは。アイツらしい。・・・アイツさ、ヒチョルヒョンを起して怒らせたら怖いからピアノは弾かないって言ったんだ。俺がイェソンヒョンはいいのかって言ったらなんて言ったと思う?『ヒョンが僕に怒ったことないし、怒らないし、怒られるようなこともしないし。・・・ヒョンと違って』って言ったんだぜ。アイツ・・・マジ俺を舐めてる。」
「ははは。お前も、愛されてるな。」
「・・・もっと分りやすく愛して欲しいよ。」

分っているくせに拗ねたように言う弟の頭をガシガシなでると、危ないって、火傷すると慌てて離れた。

「キュヒョンは今夜シウォンと来るって。ヒョン達は明日みたい。」

携帯を手にヒョクチェが言った。
こうやって海とあっちと皆で行き来する生活も悪くない。


お前も、早く加わりたいだろ?そっと右胸の石にふれて呟いた。
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Comment

何度読んでも、泣く(T0T)

読み返して、やっぱり泣いちゃいました。
ぶひひさん、すごい。
愛にあふれているお話です。ありがとうございました。

ばーばらさん

いらっしゃいませ。

> 読み返して、やっぱり泣いちゃいました。

・・・どこだろう・・・って私も戻りました。
この話かぁ。
初めて書いた話なので、恥かしい半分、嬉しい半分・・・・いや、嬉しい!
こんなの書いていいのかと思いながら、苦しいから書く!!って書いて、自分で泣いたという曰く付きのものですし。

> ぶひひさん、すごい。
> 愛にあふれているお話です。ありがとうございました。

・・・コメント、アリガタスギル!!!
ぶひひへの愛を感じます。←え、そんなこと言って無いって??
何度も?
・・・・うれしい、ありがとーーーー。
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プロフィール

ぶひひ

Author:ぶひひ
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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