あした雨が上がったら #1 

2012.12.09 00:00|☆あした雨が上がったら 
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RyeoWook side

朝から空に灰色の雲が垂れ込めていたが、更に雲行きは怪しいものになりそうだ。


―――傘、持ってるかな?


「リョウク、窓閉めろ。」

振り返るとドラフターの前でエスキースを展開するイェソンがいた。
短く返事をして窓を閉める。
風が強いわけでもないのに・・・何がイェソンにとって不快だったのかは判らないが、ドラフターに向かっている彼の後姿を眺めるのは嫌いじゃない。
どの事務所でも・・・いや教育機関でもCADが主流の今、この人ほどドラフターを愛し、活用している人はいないのではないかと思う。
実際リョウクが大学で勉強していた時もドラフターの前に座ったのは、設計実習の初め・・・2・3回程度だと思う。今時貴重な人だと思う。
もっとも、そんな人だからこそ・・・リョウクはこの仕事を得られたわけだが。

「コーヒー要りますか?」

問うと『ん。』とだけ返ってきた返事。
<要る>ようだ。
集中すると返事すらない時もある。
プロダクトデザインからグラフィックデザイン・インテリアデザインまで手がけることで業界では有名な設計事務所。
駄目もとで門を叩いたリョウクへの試験は、過去の作品集と『CADは使えるか。立体パースは?映像化できるか?』といったスキルぐらいで、試験採用が決まり翌日から来るようにと言われたのだった。
イェソンが上げるエスキースをCADに落としこみ、強度計算をし、必要なパース画やプレゼン用の3D映像に仕上げるのがリョウクの仕事だった。
大きなプロジェクトを手がける割に、従業員が3人というこの小規模さの原因は、イェソンとの距離感が問題なのだと働き始めてリョウクは理解した。
言葉のすくないイェソンは・・・言わないけれど、色々と要求しているのだ。

何をどうサポートしてほしいか。
どのタイミングで欲しいか。
話すときもプランニング同様、固まってからでないと言葉にしないから沈黙という時間だけが流れていく。

大概の人間は・・・それに気付かないか、気疲れして続かないのだろう。
イェソンの発するものに気付けるか。
そして言おうとしていることを待てるか・・・。

幸いリョウクにはその変化に気付くことが出来る繊細さも、言われるまで放って置くことが出来る図太さもあった。

ついていると思う。
・・・いや、本当にそうかな。
仕事は充実しているがプライベートはズタボロだ。
イェソンのウィークポイントでもあるコミュニケーションっていうか、営業力は別のプランニング会社が受け持っていた。
その会社の巧みな営業力によって、沢山の設計依頼が舞い込む。
実質、二つの会社で1つの仕事をしているのである。<設計部門>と<営業部門>のようなものだ。
だから舞い込んで来る仕事の量も半端ない。
こっちの処理能力を超える限界ギリギリの依頼が振ってくる。

そして、それをこなすイェソン。

一晩でプランが出来上がっていることもざらだ。
アシスタント的な仕事しかないリョウクですら帰宅すると深夜で、帰宅する際にも出社した時にも居ているイェソンはいったいどういった生活をしているのだろうか。


マグカップにコーヒーを注ぎいれ、イェソンに近づく。
目は図面から外さず差し出した手にカップを渡し、今日も終電ギリギリだなとリョウクは諦めた。
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Comment

復習しに来ました

幸いリョウクにはその変化に気付くことが出来る繊細さも、言われるまで放って置くことが出 来る図太さもあった……www

この感じすごくわかる~(笑)
リョウクって可愛いくせに結構図々しいwww

久しぶりに読んでしみじみ…( ̄∇ ̄*)ゞ

本当に復習・・・

「雨」#1から?!

わぁお・・・・ありがとうございまーす。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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