あした雨が上がったら #7

2012.12.12 00:00|☆あした雨が上がったら 
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SiWon side 

衣擦れの音で目が覚めた。
抱き寄せようと手を伸ばしたが、さっきまでそこにいたという体温だけ残して姿はなかった。

ベッドの下に丸まって落ちているボクサーパンツとスウェットを履き、キッチンヘと追いかける。
キッチンでは少し鼻にかかった声で鼻歌を歌いながら、コンロの火を調節するドンへの姿が目に入った。
そっと近づいて背後から抱きしめる。

「おわっ!・・・ちょっと、危ないだろ。」
「・・・ん。」
「聞いてるか?キッチンは駄目だ。」

ランニングシャツから覗く肩にキスを贈ると、胸に手を当てられ押しどけられる。

「・・・はい。シェフ。」
「ほらシャワーしてこいよ。直ぐ出来るから。」
「んー・・・。」
と腰に手を回したままぐずぐずしていると、俺をくっつけたまままな板の前に移動し
ナイフスタンドから包丁を抜き取り、『刻むぞ。』と言った。


「じゃぁ、キス。」
「へ?」
「キスして。」

そう言うとドンへは固まった。
キスどころか・・・もう色んなことしちゃってるのに。
目が泳いでるし。
笑いをかみ殺していると頬に柔らかい感触。

「・・・ほら。もういいだろ、行けって。」




・・・嘘だろ・・・。

今更頬にキス?



キッチンから押し出され、フラフラとした足取りでバスルームに向う。


シャワーのコックをひねる頃には笑いがこみ上げてきて、こらえきれず肩を揺らした。


ドンヘと始めて出会ったのは、会食で連れて行かれたレストランだった。
体調も悪く全ての料理をひとくちかふたくち口に運んで箸を止めていたら、
厨房からコックが飛び出してきた。
『もう食べないの?』そう聞かれ、頷くと俺の目の前で立ったままその料理を平らげた。
『味がおかしいわけでもないじゃん。あんたの舌がおかしいの?料理に対して失礼だ。』
口についたソースを親指で拭いながらそう言い放ち、慌てて飛んできた支配人に
皿と一緒に引きずられるように下がっていった。

一ヵ月後、またその店を利用する機会がありあのコックの事を思い出し、
支配人にその話をするとクビにしたと言う。

まぁ・・・俺が経営者でもそうするか。
客商売だしなと思いながらも・・・あいつなら今日はどんな料理を勧めたかなというのが
頭から離れなかった。

・・・何処に行っても、何を食べても。

半年後・・・団欒の名前の下、形式化している家族の食事会で出かけた先に、思わぬ姿を見つけた。
別にレストランに1人の客で来る客が珍しいわけではない。
しかもそこそこ高級店で・・・周りは少し背伸びしたカップルだったり、
明らかに余裕のある家族連れが殆どだ。
でも・・・目を引いたのはそこじゃない。

メニューを見る目が・・・まるで宝物を発見したかのように、嬉しそうで楽しそうなのだ。


そう、あの時のコックだった。

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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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