another ocean #1

2012.10.11 20:45|☆another ocean 【完】
another ocean
EunHyuk side



「なぁ・・・なんで俺ら溶けないの?」
「あ゛?」

デッキチェアに寝転がって肌を焼いていたヒョクチェはサングラスを少し下げ、その隙間から、声の主ドンヘの表情を伺い見るべく肘をついて上半身を起こした。胸元にあったプラチナのクロスがチャリと小さな音を立てて揺れる。

空になったヒョクチェのフローズンカクテルのグラスの向こうに、申し訳ない程度しか影を作れない、いや日陰を作るつもりならもっと大きくなくては駄目だろう。
夏の気分を演出する為の小道具にしかなっていない、パラソルの下のテーブルにドンヘが弟達と座っていた。

カラカラと空っぽになったグラスの氷をストローでかき混ぜながら、ドンヘは面白くなさそうに頬づえをついている。

サングラスで目元を隠してはいても、残ったパーツ、烏の濡れ羽色のような艶やかな黒髪で綺麗な鼻筋に薄い唇は、ドンヘの魅力を十二分に物語っていた・・・たとえそれがつまらなさそうに突き出されていても。

サングラスの奥の二重瞼の目、すこし暗めのブラウンアイはいつもの様に少し潤んでいることだろう。

甘いマスクとは対照的に分厚い胸板や、肩から上腕にかけてバランスの取れた筋肉に周囲の女子達からの羨望(欲望?)の眼差しが突き刺さっていることを、見られている当人は自覚しているのか、いないのか。

「だってさぁ、溶けるんじゃないの?普通・・・。直射日光、クロス・・・。」

そういってドンヘは自身の胸元に光るプラチナのクロスを指で弄んだ。
ヒョクチェと同じそれを。

「・・・いつの時代の話ですかそれは。」

日が当たってるドンへとは反対側の、影が出来ている場所にちゃっかり座っている末弟キュヒョンが口を開いた。

これほどプールサイドに・・・おおよそ夏が・・・いや、そもそも太陽の下が1ミクロンも似合わない男はそう居ないに違いない。

白い麻の長袖シャツにベージュのパンツという出で立ちで、かるくウェーブのかかった柔らかい黒髪に、透ける様な青白い肌、漆黒の闇の様な色の瞳は、死んだように一片の感情の兆しすら映さず、ゲーム機の液晶モニターに固定し、瞬きすら惜しんで、指だけを動かしていた。

「この程度でそんな事態に陥っていたら、僕ら今頃絶滅していますよ。それとも溶けると思っていて誘ったんですか。悪質ですね。大体ドンヘヒョンは混血だから、その項目に当てはまらないんじゃないですか。僕らだけ溶けて無くなってしまえとでも?まぁ、正確には溶けるんじゃなくて灰になるんですけどね。」

キュヒョンの最もな言葉に、捨てられた子犬のようにうな垂れるドンヘ。

ヒョクチェは庇いきれないとでも言うように頭を振り、小さく息を吐くと日光浴を続行する。
そもそもどんなに日光に肌を晒そうとも、キュヒョン同様、その透き通るぐらい白い肌は小麦色に色づく事なんて無いのだが。

「そもそもプールなんて来て大丈夫なんですか?尾びれ、鱗出ません?」
「出るかよ!!」

キュヒョンのからかいに全力で否定するドンヘを
「あぁ、そうなんですね。泡になって消えるんでしたっけ?」といって感情を微塵も込めずに、適当にあしらう弟の声が聞こえた。

「・・・ふはははは!!まぁ、折角来たんだし泳ごう。」

すぐ下の弟シウォンがシャツを脱ぎながらドンヘを誘う。

同じ遺伝子を受け継いでいながら、何をどうすればそんな体になるのか・・・きっと生まれる時のパーツ争奪戦で、俺はシウォナに全敗したに違いないとヒョクチェは独り苦々しく思う。
整った顔立ちはモンゴロイドというより、ギリシャ彫刻・・・美しい、完璧な筋肉の見本がそこにあった。

「・・・すっげー胸筋。お前は杭も刺さらないね。」
「ドンへも鍛えれば?」
「これ以上魅力的になったらこまるっしょ?」

そう鼻にかかった甘い声で言ったドンヘをプールに突き落とし、自らも水の中へと飛び込んだシウォン。
文字通り水を得た魚のように、生き生きと軽やかに泳ぐドンへの姿がそこにあった。



その姿で、声で人々を惑わせ船を座礁させるというマーメイドとのハーフだと分っていても・・・そして、その能力を差し引いたとしても、うっかり見つめられるとその瞳から逃れることが出来ない魅力がドンヘにはあった。

秋の長い夜、冷たくなり始めた空気の中で、儚い光を放ち象牙色に輝く月の様に・・・何処からか漣の音が聞こえそうな・・・郷愁を湛えた瞳。
それでいて笑えば初夏の青空のように、一点の曇りも見せず何処までも澄んでいて、心の中までも晴れやかにするのだった。

その笑顔を引き出すのが自分じゃないことに無性に腹が立ちながらも、シウォンのように献身的に相手に合わせ、相手の楽しむ顔を見ることが自分の楽しみだと、そうしている自分も楽しいのだという風に振舞うシウォンが羨ましくもあり、そうすることの出来ない自分が、苛立たしく歯がゆい。



「・・・いいんですか?」
「何が?」

主語もなく唐突に話しかけられ、ヒョクチェはキュヒョンを振り返った。

ゲームを中断する気は一向に無いらしい。
相変わらず視線を固定したままだった。
ゲームから目を離すとこいつは死ぬのだろうか?むしろここに何しに来たんだろう。
・・・しかし、何だかんだと悪態をつきながらも、自分に付いて来るこの弟を、少なからず可愛いと思っている自分がいるのも確かだが。

「・・・二人泳ぎに行っちゃいましたよ。」
「大丈夫だろ。」
「・・・そうじゃなくて・・・まぁ、そういうつもりならいいです。」

この弟の『何もかもお見通しです』とでも言うようなところが嫌だ。
感がいいうえに、妙に頭が回る分だけ性質が悪い。
何より自分自身でもこの感情がなんなのか・・・抱え込んで手放せなくなっているドンヘへの自分の思いを知られたくないのに、知ってほしい。
どう処理すればいいのかも検討がつかないというのに、コイツは何を察したのか。

「・・・キュヒョナ、お前ドンヘの弟に会いに行ってるって?」

話をそらしたくて出した話題。
しかし、キュヒョンの動揺を誘うには十分だったのか・・・指が止まった。

ドンヘの弟リョウクはキュヒョンと同い年だった。
幼い頃はよく一緒に遊んだらしいのだが、今は尋ねて行くことがなかった。
ドンヘの口から弟の話を聞く程度で、面識が無いといっても過言ではないだろう。
リョウクは家から出られないと言っているし・・・そのリョウクとキュヒョナの接点はどこにあるのだろうか。

「えぇ・・・・まぁ、時々。」

冷静を取り繕ったつもりだろうけれど、慌てて動く指がゲーム上で劣勢に追い込まれていることと、髪から覗く赤くなった耳が、キュヒョンの動揺を物語っていて、生意気な弟をやり込めたことに・・・少なくとも一矢報いることが出来たのに満足して目を瞑った。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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