another ocean #2

2012.10.12 20:05|☆another ocean 【完】
another ocean

SungMin side

むかしむかしで始まるお伽噺・・・狼と七匹の小ヤギ、ヘンゼルとグレーテル・青い鳥。
毎晩兄さんとワクワクしながら聞いた。夢に落ちるまでのほんのひと時。
暖かい布団に包まってベッドの中で聞く母さんのお話が大好きだった。
中でも僕ら兄弟のお気に入りは、狼男やフランケンシュタイン・ドラキュラ・・・ローレライなど不思議な生き物のちょっと恐ろしく、どこか悲しげな不思議な話。
何度もせがんで話してもらったっけ。
『ドラキュラはね・・・・・だから・・・・するのよ。』


「・・・ナ、ソンミナ!!起きろ!!」

肩を捕まれ、大きく揺さぶられる。

「ん・・・」
「遅刻するぞ!!」

チコク・・・遅刻・・・遅刻?!それは拙い!!
跳ね起きるとベッド脇にニヤニヤ笑いながら佇む、同室の親友ドンヒが居た。
・・・また・・・やられた。
枕元の携帯で時間を確認する・・・7:30・・・

「お前・・・いい加減にしろよ。しかも、今日は休みだろ。」
「毎朝騙される方がどうかしてる。学習できないなんてバカだな、バカ。」
「・・・うるさい。」
「そんなこと言っていいのか?今日ばかりは俺に感謝すべきなんじゃないか?」

毎朝毎朝、ふざけておいて感謝だと?何処の世界にそんなバカがいる。
俺のことそんなにおめでたい馬鹿だと思っているのか。何がしたいのか知らないが、その手には乗らない。ドンヒの言葉を勤めてクールに受け流し、ベッドを整える。

「・・・お前、本当にバカか?今日が何の日か忘れたのか?」

不機嫌を顔に貼り付け、それを隠そうとする努力を微塵もすることなくドンヒを振り返ると、大げさに天井を仰いであーとかうーって言ったかと思うと、今度は下を向いて頭を左右に振っている。
?・・・バカはお前だろ。

「今日は兄貴が赴任先から戻ってくる日だったんじゃないのかよ?迎えに行かない気なのか?」

ドンヒの言葉に壁に掛かっているカレンダーに目をやる。
目に飛び込んでくる赤い丸・・・ドンヒを真似るかの様に、あーとかうーって言って頭を抱えてしゃがみ込む俺。

マジ、ヤバイ。

5年ぶりにやっと会えるのに・・・二人っきりの家族なのに・・・忘れるなんてどうかしている。
情けなさすぎて涙が浮かんだが、泣いている場合ではない。
迎えに行くと言ってあるのだ。慌ててスウエットを脱ぎ捨てベッドに放り投げると、手近にあった服に袖を通す。
寝癖の着いた頭をキャップで隠し、部屋から出ようとすると「ソンミナ!」と呼び止めらた。
振り返ると、何かが飛んできて、それを受け止める。
チャリッと手の中で音がしたのはドンヒの愛車の鍵だった。

「あわてて事故るなよ。・・・おれの彼女に傷つけたら許さないからな。」

そういってお茶目にもウィンクをし、調子に乗って投げキッスを寄越すマネをする。
それらを丁重に叩き落す振りをして、車の鍵を顔の横に掲げて
「これだけで十分。ありがとう。」そう言ってあわてて靴を履き部屋を飛び出した。

後ろで「こけるなよ」という声に続いて、ドンヒの馬鹿笑いが追いかけて来た。



車を止め、慌てて下り、兄カンインの姿を探す。
到着便はひと段落したのか、空港は人影もまばらだった。
カンインは怒ってもうここを離れたのかも・・・ソンミンは短く息を吐くと、さてどうしようかと考え込む。
こういう場合、心当たりを片っ端から当たるしかないが・・・兄の交友関係を知っているわけでもなく、何処をあたればいいのかさっぱり分らなかった。
一つだけ思い当たる実家は、兄の入隊時に処分し、もう5年も前に人手に渡っていた。
除隊後、腕を買われて軍関係の任務についてあちこち赴任し、ソウルにはもう何年も帰ってきていない。

「僕、けっこう薄情な弟だよね。」

他人事のように呟いて、当ても無く車に乗り込もうとした時、視界の隅に男女3人が目に入った。
自分と同じように兄を迎えにきたのだろうか。スーツを着た男に長身の美女と、まだ幼さの残る女の子。
うれしそうに笑う二人の姿に、車を発進させながら、じぶんもあんな風に笑って兄を出迎えるはずだったんだと胸が痛んだ。
その横を通過する時、逆光で見えなかった男の顔が見え、慌ててブレーキを踏む。
車は大きな音を立てて、20メートルも制動距離を要したあげく、ガクッという大きな振動と共に停車した。
慌ててギアをRに入れ、バックで三人に近づき、その脇に停車する。

「兄さん?」

ソンミンが運転席から転がるように飛び出して駆け寄ると、頭をはたかれた。

「ってぇ・・・。」
「おっそい。感動の再会はどうした?!・・・どうせ寝てたんだろう。」
「・・・う・・・ごめんなさい。」

横でクスクスと笑う声が聞こえ、顔を上げると全く雰囲気の違う二人なのに、同じ顔で笑っていた。

「あぁ・・・ソンミナ、彼女はミナさんとその妹のアンリちゃん。これ、弟のソンミン。」

これと言われ、慌てて頭を下げると柔らかい笑顔で頭を下げるミナさんに、アンリちゃんの元気のいい声で返答が返ってきた。

「ソンミナ、車買ったのか?」
「いや、ドンヒの。借りてきた。」
「ちょうど良かった。帰るから俺ら送って。」
「・・・ええっと・・・俺ら?」
「俺と、ミナとアンリ。」
「・・・ヒョン、何処に帰るって?」
「ミナん所。」
「えっ・・・ちょっ・・・駄目でしょう。」ミナさんを振り返るとニコニコ笑っている。
「いいの、いいの。俺らもうすぐ結婚するんだし。」
「・・・はぁぁぁ?何言ってるの!!マジで!?」
「嘘ついてどうすんだよ。」
「だって・・・付き合ってる人いるの知らなかったし!!」
「言ってないし。」
「ヒョン!!」

カンインと言い合っていると視界の隅で、女の子、アンリちゃんの手が動く。
・・・それって、手話?ミナさんは耳が聞こえてないの?
カンインを見つめると、逞しくなった体と共に、頼りがいのある風格が漂っていて、彼女に向けられる優しい眼差しに、自分の知っている兄が・・・いつの間にか逞しい男になっていて驚いた。
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FF、SJ中心で・・・BL取り扱いです。

CPはイェウクを中心に・・・83はもちろん、2woon ウンシヘ マンネラインまでほぼ全てに萌える○態です。
まぁ"みんな違って みんないい”ってことで。

*作者の脳内でのお話ですので、当然事実と異なります。事実も都合のいいように解釈し捻じ曲げ、誇張します。苦手な方、取り扱い注意です。

紙媒体化はじめました。(カテゴリ『はじめに』・・・より『本棚』へどうぞ)

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